マセラティ・レヴァンテ V8ウルティマへ試乗(2) 妥協も許せる豊潤なソウル メカニカルな感覚

公開 : 2024.01.14 19:06

競争が激化する、大型プレミアムSUV市場 フェラーリ製3.8L V8ツインターボを搭載したV8ウルティマ 豊潤なソウルやメカニカルな味わい 英国編集部が評価

豊潤なソウルとメカニカルな味わい

マセラティレヴァンテの最高出力は、4気筒ガソリンターボのマイルド・ハイブリッド、GTで330ps。スターター・ジェネレーターが組まれ、荷室フロア下の駆動用バッテリーへ運動エネルギーが回収される。0-100km/h加速時間は、6.0秒と充分だ。

V6ツインターボのモデナは、430ps。0-100km/h加速を5.2秒でこなす。

マセラティ・レヴァンテ V8ウルティマ(欧州仕様)
マセラティ・レヴァンテ V8ウルティマ(欧州仕様)

これはフェラーリ由来のユニットで、アルファ・ロメオのクアドリフォリオ用エンジンと同系統になり、反応は鋭敏で回転上昇は意欲的。パワーデリバリーも滑らかだ。サウンドもモダンでエキゾチック。スポーティな印象を補強している。

対して、同じくフェラーリ製V8ツインターボを積むレヴァンテ V8ウルティマでは、4.0秒を切る。かつての自然吸気ユニットほど魂を揺さぶるものではないが、スムーズで素晴らしいサウンドも響かせる。

ストロークの長いアクセルペダルを使い切れば、本物の高性能SUVであることを実感する。アルファ・ロメオ・ステルビオ・クアドリフォリオほどの攻撃性は感じられないが、より上質で角の取れた、マセラティの個性とも一致している。

トルクは豊かで、トラクションも見事。48-112km/hの中間加速を、4.5秒でこなす。V8ディーゼルエンジンの、アウディSQ7へ匹敵する鋭さだ。

より多い予算を準備すれば、一層の速さも手に入るはず。しかし、豊潤なソウルやメカニカルな感覚、優れたマナーなどを備えるモデルは、この価格帯では非常に限られる。

大型SUVとして優れる乗り心地と操縦性

乗り心地と操縦性は、大型SUVとして優れる。クラストップのカイエンのように驚くほどではないものの、登場から8年が経過しても平均以上の仕上がりにある。

エアサスペンションはスピードに応じて車高を自動的に調整し、コンフォート・モード時はしなやかで穏やか。ただし、高速域でのロールは大きめ。段差を越えると、若干跳ねるような揺れが残る。

マセラティ・レヴァンテ V8ウルティマ(欧州仕様)
マセラティ・レヴァンテ V8ウルティマ(欧州仕様)

スポーツモードへ切り替えると、ステアリングホイールの重み付けが増し、姿勢制御も引き締まる。乗り心地は明確に硬くなり、強めの衝撃が届くことも。

後輪操舵システムは備わらず、2160kgの車重が巧みに隠されるわけではない。リアタイヤ主導の四輪駆動システムは、厳しい路面状態での能力に多少の制限を生んでいる。

だが、グリップ力と姿勢制御は充分に優秀。ステアリングホイールには、ドライバーの気持ちを刺激するような感触も伝わってくる。レシオがクイックとはいえず、タイトコーナーでは、予想より思い切って手を動かす必要があるけれど。

パワーの発生は滑らかで、狙ったラインをしっかり辿れる。リミテッドスリップ・デフは、アクセルペダルの加減でのスタンス調整までは叶えていない。スタビリティ・コントロールをオフにしパワーを加えていくと、穏やかにアンダーステアへ転じる。

それでも、高めの速度域でカーブの連続する道を流す体験は、非常に楽しい。マセラティのSUVとして、もっと躍動的な個性が備わっていても良いとはいえ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

マセラティ・レヴァンテ V8ウルティマへ試乗の前後関係

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