8. ヒョンデi30 N

ヒョンデは、高性能車の「N」ブランド初のモデル、i30 Nに大きな関心とリソースを割いていた。これは、元BMW M部門のエンジニアリング最高責任者アルバート・ビアーマン氏を雇い、莫大な研究開発資源を注ぎ込んで作られたクルマだ。そして、注意点は1つや2つあるものの、ヒョンデの苦労は無駄ではなかった。

i30 Nは驚くほどハードコアな気質と、ホットハッチの経験がほとんどない自動車メーカーからは想像もできないようなパフォーマンスを持っている。操作系の重さ、パワーデリバリーのブースト感、減衰の硬さには、実にオールドスクールな味わいがある。

8. ヒョンデi30 N
8. ヒョンデi30 N

ただ、ヒョンデはチューニングをやりすぎてしまったようで、サスペンションは硬くアグレッシブで、ステアリングやドライブモードには妥協がなく、馴染みにくいクルマになっている。また、調整の幅が細かすぎるのもちょっと問題で、ヒョンデは数千もの設定パターンを誇らしげに強調しているが、楽しく走りたいだけのドライバーの手には余る。

i30 Nは、グリップを追求するのではなく、実用的な扱いやすさを追求したセッティングがベストであり、バランスの取れた、純粋に魅力的なドライバーズカーとなる。

9. スコダ・オクタビアvRS

チェコの自動車メーカーであるスコダのCセグメント車、オクタビアをチューンナップしたvRSモデルは、実用性と刺激的なドライビングの両立を諦めきれない一定の年齢層以上のドライバーに向けたベストアンサーである。

このクルマの最大の特徴は多用途性だ。最高出力245psの2.0Lターボガソリンと、最高出力200psの2.0Lディーゼルがあり、後者には四輪駆動も設定される。ガソリンエンジンにはかつて3ペダルのMTが用意されていたが、現在はもう選べない。英国では一時期、現物給付税対策として1.4Lのプラグインハイブリッドもあった。ボディスタイルは5ドア・ハッチバックとステーションワゴンから選べる。

9. スコダ・オクタビアvRS
9. スコダ・オクタビアvRS

ハイブリッドはドライバーズカーとしては少々ちぐはぐであったが、ターボガソリンはファミリーカーに適したしなやかな乗り心地と広さを持ち、力強さと鋭いハンドリングも兼ね備えている。一方、四輪駆動ディーゼルは欧州で求められる牽引能力や日常での使い勝手に優れ、経済性や航続距離も期待できる。エンジンによってキャラクターの棲み分けが適度になされているのだ。

通勤にも、家族のロングドライブにも使えるようなホットハッチを探しているなら、オクタビアvRSがいいかもしれない。スピードと繊細さがさりげなく調和した、現代の「Qカー」と言える。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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