「スーパー」なGTクーペ アストン マーティンDB12 フェラーリ・ローマ マセラティ・グラントゥーリズモ 3台比較試乗(1)

公開 : 2024.02.03 09:45

ローマを凌駕するパワーウエイトレシオ

グラントゥーリズモの最高出力は550psで、今回の中では最も控えめ。エンジンもV型8気筒ツインターボではなく、V型6気筒ツインターボだ。しかし、有能なパートタイム方式の四輪駆動システムを内包する。

雨がちで古いアスファルトが残る道では、馬力は大きい方が有利とは限らない。どのように引き出せ、展開できるかの方が、重要な可能性は高い。

アストン マーティンDB12(英国仕様)
アストン マーティンDB12(英国仕様)

DB12は最も強力。メルセデスAMG由来の4.0L V8ツインターボは、DB11のユニットとは桁違いの能力を発揮する。最高出力は680psで、ローマを凌駕するパワーウエイトレシオを実現させた。

シャシーは徹底的に見直され、DB11より軽量化されている。0-100km/h加速は3.4秒対3.6秒で、ローマの方へ軍配は上がるのだが。

ずぶ濡れのワインディングへ出発する前に、インテリアを観察しよう。3台は現代のグランドツアラーとして、求められる実用性の基準を満たしている。2+2の範囲を超えないが、リアシートも備わる。

小学生の子供なら、多少狭くても、スタイリッシュなクーペへ乗りたがる。筆者も試しに座ってみたが、グラントゥーリズモは小さなサルーンと同じくらい、快適に過ごせることへ驚いた。フロントシートを前方へ寄せる必要はない。

DB12のリアシートにも、筆者の身体は収まった。だが、フロントシートは少し前へスライドする必要がある。ローマは、小学生の低学年までしか対応できない。荷室も、一番広いのはグラントゥーリズモだ。

過去のアストンと一線を画すインテリア

とはいえグランドツアラーの場合、フロントシート側の印象の方が大切。グラントゥーリズモのダッシュボードには、大きなタッチモニターが備わるものの、高級感に欠けるプラスティック製のスイッチ類などが散見される。

センターコンソール上のシフトボタンも、16万1250ポンド(約2999万円)の高級車には不釣り合いだろう。ドアのリリーススイッチは、一般的な量産車の部品のように見えてしまう。

マセラティ・グラントゥーリズモ・トロフェオ(欧州仕様)
マセラティ・グラントゥーリズモ・トロフェオ(欧州仕様)

空間には、不足ない余裕がある。ドライビングポジションは、ローマとDB12の方が低く、背もたれは倒れ気味だ。

DB12のインテリアは、過去のアストン マーティンのそれと一線を画す。10.3インチのタッチモニターへ目がゆきがちだが、特筆すべきは、ローレット加工された金属製ノブなど、高品質なディティールだろう。本物の豪華さを漂わせている。

デザインは、完璧ではないかもしれない。ドアパネルやセンターコンソールなど、製造品質に若干の疑問を抱く部分もある。だが、前例ないほど訴求力は高い。これほどラグジュアリーな車内は、歴代のDBシリーズで初といっていい。

ローマは、快適に過ごせるものの、小ぶりなボディサイズが故に少しタイト。内装のデザインは、もう少し華やかさが欲しいと感じた。

この続きは、DB12 ローマ グラントゥーリズモ 3台比較試乗(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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