消滅は「人類の進歩」といえるのか? ベントレー・フライングスパー・スピードでザ・マッカランへ(2)

公開 : 2024.04.13 09:46

120台限定の「エディション12」 ザ・マッカランとのコラボで誕生したシングルモルトの「ホライズン」 ベントレーの成功を導いたW12エンジンを英国編集部が乗り納め

短時間で長距離を走破するW型12気筒

同行してきた同僚と、運転を1度交代。筆者は、他人の運転ではクルマ酔いすることが多い。ところが、ベントレーフライングスパーでは杞憂だった。できるだけ空想したり、美しいダッシュボードの仕立てを眺めていたからかもしれないが。

化粧パネルには、W型12気筒ユニットの点火順序を記した数字が刻印されている。カフェインが切れた頃、うたた寝してしまったらしい。エンジンは極めて静かに回転し、ドライブトレインは上質に路面へパワーを伝える。緊張を誘う要素は微塵もない。

ベントレー・フライングスパー・スピード・エディション12(英国仕様)
ベントレー・フライングスパー・スピード・エディション12(英国仕様)

しばらく立ち止まって、景色を鑑賞したいと思う場所もあった。しかし、フライングスパー・スピード・エディション12にとって最高といえる道が続いているから、そんなアイデアはすぐに忘れてしまう。

W12エンジンは、乗員にストレスを与えず、可能な限り短時間で長距離を走破することを得意としている。車重が2437kgあったとしても、フライングスパーにはオーバースペック。アクセルペダルを少し深めに踏み込んでも、ノイズは殆ど響いてこない。

スペック表には驚くような数字が並んでいるが、存在感は極めて小さい。特筆すべき強みの1つといえる。

スコットランドの田園地帯に広がる、適度な起伏とカーブが連続する区間で、フライングスパー・スピード・エディション12へ軽くムチを入れる。変速はこれ以上ないほど滑らか。5316mmある全長を感じさせないほど、操舵に対しダイナミックに反応する。

例えようがないほど、素晴らしい

燃料タンクの容量は90L。満タンで約650km走れる。A95号線を進み、アベラワー蒸留所を通過。ザ・マッカラン蒸溜所へ辿り着いた時の燃費は、平均で9.0km/Lだった。

カースティン・キャンベル氏への質問のように、運転を終えて、筆者も今回の印象を自問してみる。「素晴らしい」という、シンプルな言葉が初めに出てきた。褒め称えるような表現も頭に浮かんだが、数時間の体験を要約すると、このひとことに帰着する。

ベントレー・フライングスパー・スピード・エディション12(英国仕様)
ベントレー・フライングスパー・スピード・エディション12(英国仕様)

例えようがないほど、素晴らしい。ウッドとレザーがふんだんに使われたインテリアも、ベントレーらしい味わいだったと思う。セレブではないから、墓穴を掘らないよう、感想はこのくらいにしておこう。

高級ウイスキーに馴染みがない自分にとって、4万ポンド(約756万円)の「ホライズン」の価値を正しく理解することは少々難しい。それでも、物語性には共感できる。特別さにも。

初めて訪れたザ・マッカラン蒸溜所のスタッフは、ベントレーのスタッフと印象が重なった。それぞれがエキスパートで、技術や知識を追求した人ばかり。非常に仕事熱心だが、とても親しみやすく、筆者を温かくもてなしてくれた。

ホライズンは、700mLのボトルで700本しか提供されない。ザ・マッカランのクリエイティブディレクター、ジャウマ・フェラス氏の話では、その希少性は10台以下の限定生産モデルに相当するという。5000本でも、かなり希少な扱いになるそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フライングスパー・スピードでザ・マッカランへの前後関係

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