ベントレー・ベンテイガ 詳細データテスト 上質で広い 動力性能も操縦性もハイレベル 文句なく快適

公開 : 2024.05.04 20:25

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

SUVではあるものの、EWBの普通ではないプロポーションは、背の高いステーションワゴン的なシルエットを描いている。全長5305mmというベントレー最大のサイズは、だいたいロールス・ロイスカリナンと同じだが、全高は100mmほど低い。

ほかの高級車のロングホイールベース版ほど違和感はないように見えるが、よく見れば後席ドアが伸びているのがわかるはず。ホイールベースは2995mmから3175mmに伸びている。両ドアを開けた際の幅は4400mmで、ロールス・ロイス・スペクターに次ぐ広さだ。

最上位モデルに相応しかったであろうW12亡き今、エンジンは4.0LのV8のみ。ただし、ハイブリッドが近く追加される見込みだ。
最上位モデルに相応しかったであろうW12亡き今、エンジンは4.0LのV8のみ。ただし、ハイブリッドが近く追加される見込みだ。    JACK HARRISON

それ以外、EWBの外見は通常のベンテイガとほとんど変わらない。異なるのは、グリルとホイールのデザインくらいだ。とはいえ、ロング化に伴い、ボディは大きく変わり、アンダーフロアは完全新設計されたと、ベントレーは説明している。

またEWBには、ベンテイガ初の後輪操舵が搭載され、全長が伸びながら、回転サークルは通常モデルより小さくなった。関連性の強いアウディSQ7には採用されていたこの技術が、これまでベンテイガに導入されなかったのは何故か。2017年にベントレーのチーフエンジニアは、自社のクルマに積むには「まだ熟成が足りない」と述べている。そのときから改善されたのだろうが、街乗り中心のユーザーからすればもっと早く対応してほしかったところだろう。

改良版ベンテイガはエアサスペンションを装備するが、EWBは専用チューンとなる。とくに5〜20Hz帯が優れていて、競合車に比べセカンダリーライドの振動が最大27%低減しているという。ロング版となれば、乗り心地関連の洗練度向上も期待される。ベントレー史上最高の乗り心地さえ求められるところだ。

エンジンは、アウディ開発のV8で、4.0Lで550ps/78.5kg-mを発生する。トランスミッションは、ZF製の8速ATだ。ベントレー最上級モデルには、6.0LのW12のほうがふさわしかったと思うかもしれないが、残念ながら生産終了してしまった。もっとトルクがほしいなら、近く登場すると目されるハイブリッドバージョンを待つといいだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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