「甘辛」の丁度いいバランス! メルセデスAMG CLE 53へ試乗 直6マイルドHVで449ps M4のライバル未満

公開 : 2024.07.31 19:05  更新 : 2025.02.20 10:38

重層的なサウンド クイックなステアリング

予習はこのくらいにしておこう。エンジンを始動させると、4本出しのマフラーから想像するより、最初のひと吠えは静か。アイドリングストップも積極的に作動する。

右足を倒せば、不満なくパワフル。重層的でスムーズな、直列6気筒サウンドが心地良い。ドライブモードを本気側へ切り替えると、変速時にババッとマフラーが鳴るが、エンジン音自体は大きく変化しないようだ。

メルセデスAMG CLE 53 4マティック+(英国仕様)
メルセデスAMG CLE 53 4マティック+(英国仕様)

9速ATの仕事は迅速だが、デュアルクラッチ・ユニットではない。ATモードのままで回転数を引っ張ると、レブリミットの手前でソフトリミッターが介入し、柔らかくシフトアップされる。

乗り心地は、通常のCLEより悪いということはない。低速域ではやや鋭い揺れが伝わり、ロードノイズも大きめながら、全般的にはM4より隔離性が高く快適。日常的にも乗りやすいと感じるはず。

ステアリングは、重めでクイック。ロックトゥロックは2回転もない。後輪操舵システムは、舵角が2.5度と控え目なものだが、機敏な回頭性に貢献している。可変レシオのステアリングラックと相まって、小気味いい。情報量豊か、というわけではないけれど。

フロントタイヤの幅は、265とワイド。ミシュラン・パイロットスポーツS5だから、グリップ力は間違いない。

連続するカーブを積極的に走る場合は、姿勢制御が引き締まるスポーツ・モードが好適。正確なステアリングへ呼応するように、身のこなしの流暢さが増す。基本的には、安定志向ではあるが。

M4のライバルではなくても丁度いいバランス

今回の試乗では、正確な燃費を確認できなかった。カタログでは10.4km/Lがうたわれているが、449psを引き出せば、遥かに届かないことはいうまでもない。

アグレッシブな見た目を持つクーペのCLE 53だが、M4の直接的なライバルとまではいえないだろう。しかし、英国価格はBMW M440iより若干高い程度でありながら、動力性能は遥かに高く、スタイリングも魅力的。訴求力は高いように思う。

メルセデスAMG CLE 53 4マティック+(英国仕様)
メルセデスAMG CLE 53 4マティック+(英国仕様)

通常のメルセデス・ベンツCLEには450があり、こちらにも直列6気筒エンジンが搭載されている。だが、そこまでスポーティではないし、スタイリングのインパクトも強くはない。適度に優しいAMG CLE 53は、丁度いいバランスにあるのかもしれない。

◯:力強く個性を感じる、滑らかな直列6気筒エンジン 好印象な内外のデザイン 日常と非日常をバランス良く両立させている
△:重めの車重 潜在能力を発揮させるには、プロ・パフォーマンスを選ぶ必要がある

メルセデスAMG CLE 53 4マティック+(英国仕様)のスペック

英国価格:7万3075ポンド(約1490万円)
全長:4855mm
全幅:1935mm
全高:1435mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:4.2秒
燃費:10.4km/L
CO2排出量:217g/km
車両重量:1925kg
パワートレイン:直列6気筒2999cc ターボチャージャー+電動コンプレッサー+ISG
使用燃料:ガソリン
最高出力:449ps/5800-6100rpm
最大トルク:56.9kg-m/1800-5000rpm
ギアボックス:9速オートマティック(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    サム・フィリップス

    Sam Phillips

    役職:常勤ライター
    AUTOCARに加わる以前は、クルマからボート、さらにはトラックまで、EVのあらゆる側面をカバーする姉妹誌で働いていた。現在はAUTOCARのライターとして、トップ10ランキングや定番コンテンツの更新、試乗記や中古車レビューの執筆を担当している。最新の電動モビリティ、クラシックカー、モータースポーツなど、守備範囲は広い。これまで運転した中で最高のクルマは、1990年式のローバー・ミニ・クーパーRSP。何よりも音が最高。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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