レンジローバー・スポーツ 詳細データテスト 増した円熟味 影を潜めたダイレクト感とシャープな走り

公開 : 2024.09.07 20:25

走り ★★★★★★★☆☆☆

先代SVRのV8が放つエキゾーストノートは、もっともワイルドなモードにすると、高速道路で400mくらいまで近づいたら、先行者が道を開けてくれそうなほどだった。しかし、大きな変化を遂げたSVは、少なくとも多少はおとなしくなっている。

威圧的なスーパーチャージャーユニットに代わるのは、やや音が高くなったV8。攻撃的で刺々しい性格はトーンダウンし、均質でメロディアス。ただし、作られたような音になっているのは、エミッション規制強化の影響を否定できない。

先代SVRよりサウンドはおとなしいが、動力性能は高まっている。しかし、選んだモードによってスタイルを変える順応性こそ、このパワートレインの強みだ。
先代SVRよりサウンドはおとなしいが、動力性能は高まっている。しかし、選んだモードによってスタイルを変える順応性こそ、このパワートレインの強みだ。    MAX EDLESTON

このツインターボV8、デリバリーのスタイルと広さは豊かだ。回転はよく、望めば7000rpm以上まで回り、スタンディングスタートや低いギアでの加速は掛け値なしの凶暴さを感じさせる。

ローンチコントロールでの発進は、スムースで高級車的とは言えない。ボディは思い切りリアを沈ませることはないが、一連の自動変速は素早く、頭が後ろへ押し付けられる。パフォーマンスカーにトルクコンバーター式トランスミッションを搭載することは珍しいが、ドライブラインの明らかなテンションやフリクションは、LSDの効果もあって、はっきりと感じられる。

もちろん、トラクションや前進する勢いは有り余るほどで、不足を感じることはまずないだろう。しかし、0−97km/hは3.9秒で、先代SVRの4.4秒は凌ぐが、3.5秒を切るポルシェランボルギーニ、さらに速いEVも存在するクラスで、ライバルと見比べてしまうと物足りない。48−113km/hも同様で、ウルスが2019年に2.8秒だったのに対し、3.2秒にとどまった。

しかしながら、このパワートレインの強みは、速さそのものより順応性だ。SVモードでは、各ギアをホールドする時間が長くなり、コーナーに近づくとエンジンがオーバーランして、明らかにスポーティな感覚を味わえる。

もっと穏やかに走らせる場合には、すばらしくなめらかで従順。オフロード向きのモードでは、パワートレインのコントロールとレスポンスがやや緩くなるが、駆動力の細かいマネージメントにより、ちょうどいいくらいに調整される。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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