レンジローバー・スポーツ 詳細データテスト 増した円熟味 影を潜めたダイレクト感とシャープな走り

公開 : 2024.09.07 20:25

レンジローバー・スポーツのトップグレードであるSVは、先代SVRより熟成された高級なパフォーマンスモデルとなりました。しかし、刺激的な走りが支持されるスーパーSUV市場においては、存在感がやや薄らいだ印象です。

はじめに

ローバーのエンジニアだったゴードン・バッシュフォードとスペン・キングが元祖レンジローバーを1970年に生み出したとき、このクルマの重要性がいかに高いか想像できなかった。ランドローバーブランドのさまざまな所有者たちは、その後50年にわたり、レンジローバーの名のポテンシャルを探り、今なおJLRがそれを続けている。

今週のテスト物件は、新型のレンジローバー・スポーツSVだ。物欲を超そそる、レンジローバー・スポーツのトップグレードが多少考え方を変えてきたもので、2014年のペブルビーチでデビューした先代のSVRからほぼ10年ぶりの代替わりだ。

テスト車:レンジローバー・スポーツSVエディション・ワン
テスト車:レンジローバー・スポーツSVエディション・ワン    MAX EDLESTON

ランドローバーのエンジニアたちが494RSと呼ぶ先代SVRは、ビジュアルもサウンドも全開で、JLRのスペシャルヴィークルオペレーションの象徴的なモデルであり、パフォーマンス方面のピークでもあった。ジャガーのワイルドなスペシャルモデルであるプロジェクト7ロードスターやプロジェクト8セダンに数年先駆けて登場し、それらとともにJLRが放つポルシェメルセデスAMGの領域へ踏み込んだことを示したものでもある。

しかし、新型SVは、違う方向性を目指しているようだ。オンロードでのパフォーマンスやハンドリングを最優先事項とするのではなく、もっと広い分野で魅力を高めたレンジローバーとすることを狙っている。レンジローバーの歴史に名を残すハイパフォーマンスモデルとは、異なるエンジニアリングを持ち込み、洗練性やラグジュアリーさ、レンジローバーらしい引き算のデザインを際立たせようとしているのだ。

はたして、この多方面で究極を追求したクルマは、スーパーSUV市場で存在感を示すことができるのだろうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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