ビッグ3は大混乱 マーキュリー・モナークとフォード・グラナダ(2) 無力感漂う小さな高級車
公開 : 2025.04.05 17:46
同時期のメルセデス・ベンツより静かかも
あいにく、直6エンジンは完調ではない。排気マニフォールドのガスケットが割れており、ボフボフとガスが漏れている。そのノイズがなければ、恐らくほぼ無音で回転するのだろう。この頃のメルセデス・ベンツより、静かといえたかもしれない。
乗り心地は快適。ホールド製の高いシートは、フレームもぐらつかず、グリーンのナイロン製クロスが上質。伝統のウェスト・オブ・イングランド社製クロスに劣らない。フェイクのウォルナット・トリムは、本物のベニアに見えないとしても。

メーターパネルは、かなりシンプル。速度計と燃料計は備わるが、それ以外は警告灯で賄われている。エアコンの操作系は扱いやすい。しっかり、冷風も出てくる。
今回の例ではパワーウインドウが備わらず、高級車の扱いでありながら、ワインダーで巻き上げる必要がある。アメリカに住んでいた初代オーナーは、電動である必要性を感じなかったのだろうか。ボンネットの前方には、マーキュリーのオーナメントが輝く。
トランスミッションは、3速マニュアルも選択できたが、殆どは3速オートマティックが組まれた。発進時から極めてシームレスで、変速は感知しにくく、スルスルとトップギアが選ばれる。
低域トルクが太く、走りは98psと1588kgの組み合わせから想像する以上に軽快。とはいえ、鋭い速度上昇を求めてキックダウンを誘っても、勢いが増すわけではない。
ビッグ3が大混乱に陥っていた事実
4.1L直6エンジンはトルクフル。驚くほど安楽に、現代の交通へ交わることができる。レスポンスは緩いが、走りはスムーズだ。
アメリカは、速度制限が厳しい。時速55マイル(88km/h)を大きく超えて運転するドライバーは殆どいないと、1970年代は考えられていた。目一杯引っ張れば、150km/hに届くはずだが、100km/h以下での利用が前提といえる。

ダッシュボードには、リンカーン・マーキュリー級に乗り心地を調整済み、といった旨が記されている。想像以上に硬いものの、ワイヤーホイール風キャップの被せられたスチールホイールが静かに上下し、快適性は高い。
パワーステアリングは極めて軽く、ほぼ無感触。むしろ、フィーリングが豊かなら、肩透かしだったかもしれない。それでも、回頭性は悪くない。少し気張った速度域では、ボディロールが盛大に発生するとしても。
1974年から1980年まで生産された、モナークとグラナダを悪く表現するのは簡単だろう。だが同年代に登場した、ダウンサイジングというコンセプトを掲げた高級アメリカン・サルーンで、この2台以上に優れたモデルを思い浮かべることは難しい。
もっとも、無力感という言葉がハマることは否定できない。アメリカ政府が強硬的に施行した法律と、市場の志向変化により、フォードとGM、クライスラーのビッグ3が大混乱に陥っていた事実を、モナークは全身で表している。
最小なわけでも、高速なわけでもない。だが、自動車史に刻まれるべき1台であることは、間違いないだろう。
協力:アトウェル・ウィルソン自動車博物館、ポール・エリス氏
マーキュリー・モナーク(1974〜1980年/北米仕様)のスペック
北米価格:4855ドル(新車時)/6000ドル(約90万円/現在)以下
生産数:57万5567台
全長:5080mm
全幅:1880mm
全高:1346mm
最高速度:149km/h
0-97km/h加速:17.0秒
燃費:5.0-9.2km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1588kg
パワートレイン:直列6気筒4097cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:98ps/3200rpm
最大トルク:28.9kg-m/1700rpm
ギアボックス:3速オートマティック(後輪駆動)























































































































