公道を走れレースで戦える2面性 ホルストマン・スーパースポーツ(2) 投資を超えた革新性と向上心

公開 : 2025.04.25 18:06

マフラーパイプから放たれる鋭い排気音

ソレックス・キャブレターが載った、コベントリー・シンプレックス 4気筒エンジンは、シャシーの前方へマウント。反対側に、先端へギアの付いたステアリングコラムが伸び、ダイレクトな回頭性を生み出している。

ステアリングホイールは、簡素な4スポーク。木製のダッシュボードには、速度と回転数、時計、油圧、電流のメーターが並ぶ。シフトとハンドブレーキのレバーは、ボディの外側。キャビンはタイトで、ちょうど腕を降ろした先にグリップがある。

ホルストマン・スーパースポーツ(1921〜1925年/英国仕様)
ホルストマン・スーパースポーツ(1921〜1925年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ペダルは中央がアクセル。レザー張りのバケットシートへ腰を下ろすと、右足の先へ自然に位置する。

同席していただいたスタッフは、まだエンジンの調整が充分ではないと話す。しかしクランキングさせると、即座に始動。横に伸びるマフラーパイプから、鋭い排気音が放たれ始めた。

レバーを前側へ倒し、1速へ入れる。コーンクラッチは滑らかに繋がり、充分に回転数を高めて、レバーを斜め手前へ引き2速へシフトアップ。続いて、前方へもう1度レバーを倒し、3速を選ぶ。

タコメーターは、今のところ回らない。トルクは細く、ホークスが130km/h以上の平均速度を残せた理由は、ハイレシオで高回転域を常用したからに他ならない。現在は80km/h以下へ制限されているが、往年の動力性能は充分に想像できる。

投資額を遥かに超えた革新性と向上心

ステアリングホイールは、速度を問わず軽く回せる。テストコースのバンクカーブへ侵入すると、切り始めの精度の高さに唸る。車重が軽いから、オーバーステアにならないよう、丁寧な操作が欠かせない。

ブレーキペダルを踏んでみるが、当時でも頼れるものではなかったはず。ハンドブレーキ・レバーを引いて、制動力を増す必要がある。常に全開状態のブルックランズ・サーキットでは、これで問題なかったのかもしれない。

ホルストマン・スーパースポーツ(1921〜1925年/英国仕様)
ホルストマン・スーパースポーツ(1921〜1925年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

100年前に成長を目指した多くの自動車メーカーと同じく、ホルストマンの革新性や向上心は、集められる投資額を遥かに超えていた。最先端の技術を追求しようという意志にも関わらず、1924年には再び破産管財人が介入することになる。

英国では先駆けて、油圧式四輪ディスクブレーキの量産を叶えるものの、1929年に倒産。約1400台をラインオフし、ブランドには終止符が打たれた。

幸運にも唯一生き残ったスーパースポーツは、財力のあるグレート・ブリティッシュカー・ジャーニーによって救われた。優れた性能は蘇り、新たなファンも生まれているという。1世紀を経て、忘れられた伝説の1つへ光が当てられるようになった。

協力:プレイスター慈善財団、グレート・ブリティッシュカー・ジャーニー、トヨタ・マニュファクチャリングUK社

ホルストマン・スーパースポーツ(1921〜1925年/英国仕様)のスペック

英国価格:500ポンド(新車時/量産仕様)/5万ポンド(約975万円/現在)以下
生産数:約20台
全長:4368mm
全幅:1676mm
全高:−mm
最高速度:112km/h(量産仕様)
0-97km/h加速:−秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:609kg
パワートレイン:直列4気筒1341cc 自然吸気サイドバルブ
使用燃料:ガソリン
最高出力:10.5ps
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:3速マニュアル(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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