蝶のように軽やか フィアット508S バリラ・スパイダー「コルサ」(2) 驚愕の小ささと楽しさ

公開 : 2025.09.20 17:50

508A バリラがベースの小さなスパイダー 戦前はクラス圧倒の実力 1040ccへ拡大で最高出力46ps 驚くほど小さいボディに不自然なペダル 楽しい走り 希少なフィアットをUK編集部がご紹介

エンジンは1040ccへ拡大 最高出力46ps

フィアット508S バリラ・スパイダーコルサを、クリストファー・メトカーフ氏は1953年に売却。2年後に、グレートブリテン島中部のダンステブルへ拠点を置いた、ロックハート・サービス・デポ社の元へやって来た。

「知りうる限りボディはオリジナルの2シーターで、軽合金製のフェンダーを備え、TTレースのレギュレーションへ合致します」。とロックハート氏は情報を残している。

フィアット508S バリラ・スパイダー・コルサ(1933〜1937年/英国仕様)
フィアット508S バリラ・スパイダー・コルサ(1933〜1937年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

燃料タンクは軽合金の6ガロン(約27L)で、ショックアブソーバーは特性なこと。タイヤは、15インチのダンロップ・レーシングを履くこと。エンジンは1040ccへ拡大され、最高出力は46psで、レブリミットは4500rpmだったことも、彼は確認している。

以降、複数の所有者を経て、1980年代初頭にレストア。イタリアへ戻るが、引き取ったディーラーは放置してしまう。しかし、英国のフィアット・マニア、ポール・デ・トゥリス氏が発見。2016年にグレートブリテン島へ持ち帰り、往年の輝きを保っている。

驚くほど小さいボディ 不自然なペダル

写真ではサイズ感を理解しにくいが、508S スパイダー・コルサは驚くほど小さい。ボディは美しく魅力的でも、パワートレインはどこに詰まっているのだろう、と思うほど。

丸くカットされたボディサイドのおかげで、乗降性は良い。着座位置が高く、上半身が露出する。キーを回してスターター・スイッチを引くと、小柄な4気筒エンジンは元気に目覚めた。

フィアット508S バリラ・スパイダー・コルサ(1933〜1937年/英国仕様)
フィアット508S バリラ・スパイダー・コルサ(1933〜1937年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ステアリングホイールの位置はドライバーの正面、膝の上へ伸びる。一方で、ペダルは不自然なほど近い。しかも、ステアリングコラムからぶら下がるように、中央へアクセルペダルがあり、それを挟んでブレーキとクラッチがある。

このレイアウトへ慣れることができれば、運転は難しくない。筆者は、右がブレーキで真ん中がアクセルだと、頭の中で反復し続けたけれど。

小さなフィアットは本当に楽しい

エンジンはメトカーフ時代のオリジナルではないものの、同等のチューニング・ユニットが載っている。ロンドンの南から、開けた郊外を目指して出発。すれ違うドライバーの視線は、温かいものもあれば冷たいものもある。

数分ほど走れば、コールズドン・コモンという原野が見えてくる。建物の姿は消え、交通量は少ない。筆者は、508S スパイダー・コルサへ惹き込まれていく。

フィアット508S バリラ・スパイダー・コルサ(1933〜1937年/英国仕様)
フィアット508S バリラ・スパイダー・コルサ(1933〜1937年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

エンジンは清々しいほどレスポンシブ。チューニング度が高く、低域での柔軟性は良くないとはいえ、加速は充分に鋭い。変速時は、いつもと違うペダル配置でのダブルクラッチが欠かせない。

シフトレバーは、ステッキのように長い。2速と3速はギア比の差が大きく、時間軸がズレたように印象が変わる。それでも、回転数を引っ張れば喜びが湧いてくる。小さなフィアットは、本当に楽しい。ずっと走っていたくなる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ヘーゼルタイン

    Richard Heseltine

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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