F1由来の180度V12エンジン フェラーリ365 GT4 BB/512 BB(1) 巧妙パッケージングへ唸る

公開 : 2025.05.02 18:05

エンジンの下にトランスミッションを配置

ティーポ001ユニットを設計したマウロ・フォルギエリ氏も、この違いは指摘していた。フェラーリのマーケティング担当者は、あえてボクサーという表現を365 GT4に選んだようだ。

ちなみに、180度のV型12気筒という設計は、ポルシェが1969年の917でも採用している。水平対向ユニットの経験が、豊富だったにも関わらず。アルファ・ロメオメルセデス・ベンツも、開発した過去がある。

フェラーリ365 GT4 BB(1973〜1976年/欧州仕様)
フェラーリ365 GT4 BB(1973〜1976年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

フェラーリは、V12エンジンの開発で豊富な経験を有し、バンク角を180度に広げても白紙から設計する必要はなかった。ティーポF102Aは、4.4LのコロンボV12ユニットとボアやストローク、排気量などが一致していた。

シリンダーの容積で、フェラーリはモデル名を決めていた。その結果、365と呼ばれるモデルは同時期に複数存在している。365 GTB/4のほか、4シーターの365 GT4 2+2など。ややこしいが、それらと365 GT4 BBのユニットは基本的に異なる。

そもそもV12エンジンは、バンク角を問わず完璧なバランスにある。角度を180度へ広げても、高さを抑える以外のメリットは少ない。複雑さと重量が増える可能性は高い。

また365 GT4 BBでは、トランスミッションがエンジンの下に組まれている。その結果、バンク角の狭い従来のV12エンジンと、さほど重心高が変わらないという批判もあった。ただし、これには明確なメリットがあった。

グランドツアラーとして外せなかった実用性

ミウラでは、V12エンジンを横置きし、トランスミッションはオイルパンと一体化されている。その結果、パワートレインのノイズが直接キャビンへ響き、エンジンオイルは多数のギアも潤滑することになった。

ランボルギーニはこれらを解決するため、後継のカウンタックではエンジンを縦置きし、前側へトランスミッションを配置した。パワートレインの高さは低いままだが、キャビン側へ大きく張り出し、乗員空間への影響が生じている。

フェラーリ365 GT4 BB(1973〜1976年/欧州仕様)
フェラーリ365 GT4 BB(1973〜1976年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

フェラーリの後継モデルのように、トランスミッションをエンジン後方へ組むこともできた。だが全長が増え、慣性モーメントは増大する可能性があった。1970年代のフェラーリでは、それも問題の1つになった。

高さを抑えたティーポF102Aユニットのおかげで、あえて下方にトランスミッションを配置できたといっていい。キャビンへの侵食は抑えられ、シート後方へ小さな収納空間を確保している。フロント側にも、荷室を作る余地があった。

グランドツアラーの365 GTB/4の後継として、実用性は外せない性能だった。1975年に、フェラーリはV8ミドシップの308 GTBを投入。スポーツカーとしての要求は、こちらが受け止めている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フェラーリ365 GT4 BB/512 BBの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事