電費はトップ水準 テスラ・モデルY「ジュニパー」(2) 検討候補から外す理由が見つからない

公開 : 2025.05.16 19:06

見た目や足回りが改良されたモデルY「ジュニパー」 パワートレインに目立った変更なし 乗り心地と静寂性は向上 ブレーキはバイワイヤに AWDの現実的な航続距離は480km UK編集部が試乗

チル・モードが好ましい ブレーキはバイワイヤに

大幅なアップデートを受けた、テスラモデルY「ジュニパー」。今回試乗できたのは、四輪駆動のロングレンジ AWDだった。AUTOCARでは、冬場に雪が多く降るような地域でない限り、RWDの方を推したい。

これまでのテスラらしく、アクセルペダルの反応はやや過敏。秘めたパワーを、強めに体感させる狙いがあるのだろう。筆者は、穏やかになるチル・モードが好ましいと感じた。パワー自体も制限を受け、より直感的に運転しやすい。

テスラ・モデルY ロングレンジAWD(ジュニパー/英国仕様)
テスラ・モデルY ロングレンジAWD(ジュニパー/英国仕様)

今回の改良で注目すべき技術が、バイワイヤ方式のブレーキを得たこと。これまでのモデルYでは、ブレーキペダルはディスクブレーキを動かすだけで、実は回生ブレーキと連動はしていなかった。

だがこれにより、ブレーキペダルの操作でも回生ブレーキが動作し、従来以上に滑らかに運転できると感じた。ワンペダルドライブにも対応する。

乗り心地と静寂性は向上 リモート感ある操舵

サスペンションも改良されたものの、乗り心地は硬め。ロードノイズは大きめに聞こえる。とはいえ、従来のモデルYと比べれば、明確に洗練されたことがわかる。鋭い入力の角は丸められ、ノイズの音量もあえて触れるほどではなくなった。

ステアリングホイールのロックトゥロックは、2.0から2.4回転へスローに。切り始めの反応は依然として小気味いいものの、僅かにリモート感のある印象は変わらず、漸新性にも乏しい。

テスラ・モデルY ロングレンジAWD(ジュニパー/英国仕様)
テスラ・モデルY ロングレンジAWD(ジュニパー/英国仕様)

カーブでのボディロールは小さめ。しかし視点が高いこともあり、体感的には安定感が若干弱い。重心位置は低く、グリップ力も高く、リア寄りのパワー分配でコーナリングは軽快。それでも、運転を楽しめるとはいい難い。

クラスをリードする電費 現実的な航続は480km

モデルYは、オートパイロットと呼ばれる運転支援システムが標準装備。基本的には、車線変更に対応したアダプティブ・クルーズ・コントロールといえる。

動作は滑らかだが、速度調整はワンテンポ遅れ気味。オフになっていたのか、制限速度警告は試乗車では動作していなかった。オプションで機能を拡張できるものの、欧州や英国では規制が厳しく、変化は限定的だ。

テスラ・モデルY ロングレンジAWD(ジュニパー/英国仕様)
テスラ・モデルY ロングレンジAWD(ジュニパー/英国仕様)

今回の試乗での電費は、好条件だった天候下の平均値で6.1km/kWh。他メーカーも技術向上には熱心だが、まだクラスをリードする効率といえる。現実的な航続距離は、480km前後と考えていい。シングルモーターなら、更に伸びるはず。

モデルY ジュニパーの装備に死角はない。急速充電器のスーパーチャージャーを利用できる点も、大きな強みといえる。反面、数少ないオプションは高額。例えばボディをレッドで塗装するのに、2600ポンド(約50万円)も要求される。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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