【渡辺敏史が試乗】仕立てのいいスーツの下は筋骨隆々!007の世界観を地で行くアストン マーティン・ヴァンキッシュ

公開 : 2025.05.04 11:45

総代として自らの魅力を余さず詰め込んだ役割

ヴァンキッシュといえば、アストンの総代として自らの魅力を余さず詰め込んだ役割も期待されるのが常だ。それだけにエクステリアだけでなくインテリアも隙なしの作りとなっている。ADASやインフォテインメントといった先進装備もひと通り揃っており、GT的な用途にも十分応えてくれそうだ。

パッケージ的には2シーターだが、シート背後にはハンドバックサイズの手荷物を置ける程度の恭しいスペースが用意されていた。トランクの容量は245L。鞄の形状は選ぶかもしれないが、大人2名の旅行ぶんくらいは十分賄えるスペースは有している。

インテリアも隙なしの作りだが、メーター周りのグラフィックには色気が欲しいところ。
インテリアも隙なしの作りだが、メーター周りのグラフィックには色気が欲しいところ。    内藤敬仁

ちょっと気になったのはメーター周りのデザインやパネルのグラフィックに色気が乏しいことだ。ドライバーエンゲージメントのみならず、アストンらしいエレガンスという点からみても事務的で物足りない。もはや物理針ではないことを殊更に取り上げることもないが、情感情緒を期待されるブランドゆえ、せめてヴァンキッシュくらいは見せ方をもう少し練ってもらいたかった。

2008年に発表されたOne-77の姿と重なる

メリハリの効いたヴァンキッシュのプロポーションをみているとその姿が重なるのは、2008年に発表されたOne-77だ。その名の通り77台の限定販売となったそれは、今日のヴァルキリーやヴァルハラにも通じるアストンのハイパーカービジネスの先駆けともいえる存在でもある。

ヴァンキッシュの全長はそのOne-77より200mmくらい長いが、全幅はほぼ同じ。絞り込まれたウエストからパンと膨らんだリアフェンダーにかけてのラインはちょっと市販車離れしたセクシーさを感じるが、日本の狭い街路や駐車場の料金所では、さすがにその張り出しが気になるのも確かだ。

乗り心地は現在のアストンのラインナップにおいてはラグジュアリー寄りの位置にあるDB12と遜色ない。どころか、橋脚ジョイントなどの鋭利な凹凸や大きなバウンドの収め方などはこっちの方が上かもと思わせるところがある。タイヤサイズや銘柄からすれば、望外にGT側に振れているように窺えた。

乗り味が上質に感じる理由は音にもある。路面からの入力音やパターンノイズは適度に抑えられており、普通に走る限りは会話にも困ることはない。そもそも初代ヴァンキッシュが先鞭をつけたと記憶する始動時のブリッピングは相変わらずながら、最新のモデルらしく、アイドル音は低く保たれている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。
  • 撮影

    内藤敬仁

    Takahito Naito

    1986年よりフリーランスカメラマンとして主に車関係の雑誌、広告の撮影に携わる。趣味は洗車。好きな音楽は1970年代のブリティッシュロック。たまにロードバイクでサイクリンロードを走って風圧と老化に抵抗したりする。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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