【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#7 憧れのフェラーリ・セダン!

公開 : 2025.05.09 12:05

『タタタタタタタタタッ!』

信号で止まる。アイドリング状態はとても静かだ。さすがはクロスプレーン。

フェラーリV8はパワーとレスポンス重視のシングルプレーンが基本だが、マセラティ用には快適性重視のクロスプレーンが採用されている。その効果を、今ごろになってはっきり理解した形だ。

タコちゃんことマイクロ・デポの岡本和久代表(左)とオレ(清水草一)。
タコちゃんことマイクロ・デポの岡本和久代表(左)とオレ(清水草一)。    清水草一

しばらく進むと、平坦路で『タタタタタタタタタッ!』という、金属的な振動と音が響いた。大地震の時真っ先に感じるP波のようだ。特に路面が悪いわけじゃないのに。

その後も大貴族号は、一見何の変哲もない路面で、一見気まぐれに『タタタタタタタタタッ!』という異音を発した。

オレ「なんですかね、この音」

タコちゃん「サスから出てますね」

オレ「左前かな?」

タコちゃん「右からも……」

サスがほとんどストロークしてない状態で、こういう音が出るってことは、中立付近で共振的な振動が発生しているんだろう。震源地はサスペンション取り付け部か?

ひょっとしたら前オーナーは、この音が原因で手放したのかもしれない。クラッチは85%も残ってるけど、こんなの耐えられないわ、もうイヤーッ! って。

でも、私はこれくらいガマンできる。動けばいい! 走ってくれればそれでいい! なにしろこれは激安マセラティの大貴族号なのだから!!

(つづく/毎週金曜日昼頃公開予定)

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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