【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#7 憧れのフェラーリ・セダン!
公開 : 2025.05.09 12:05
『タタタタタタタタタッ!』
信号で止まる。アイドリング状態はとても静かだ。さすがはクロスプレーン。
フェラーリV8はパワーとレスポンス重視のシングルプレーンが基本だが、マセラティ用には快適性重視のクロスプレーンが採用されている。その効果を、今ごろになってはっきり理解した形だ。

しばらく進むと、平坦路で『タタタタタタタタタッ!』という、金属的な振動と音が響いた。大地震の時真っ先に感じるP波のようだ。特に路面が悪いわけじゃないのに。
その後も大貴族号は、一見何の変哲もない路面で、一見気まぐれに『タタタタタタタタタッ!』という異音を発した。
オレ「なんですかね、この音」
タコちゃん「サスから出てますね」
オレ「左前かな?」
タコちゃん「右からも……」
サスがほとんどストロークしてない状態で、こういう音が出るってことは、中立付近で共振的な振動が発生しているんだろう。震源地はサスペンション取り付け部か?
ひょっとしたら前オーナーは、この音が原因で手放したのかもしれない。クラッチは85%も残ってるけど、こんなの耐えられないわ、もうイヤーッ! って。
でも、私はこれくらいガマンできる。動けばいい! 走ってくれればそれでいい! なにしろこれは激安マセラティの大貴族号なのだから!!
(つづく/毎週金曜日昼頃公開予定)