「人が買える値段のクルマを出す」 革新的な格安EV、米スレート・オートの野心

公開 : 2025.05.15 06:45

米国の新興企業スレートは先月、低価格の電動ピックアップトラックを発表して大きな注目を集めました。設計責任者がインタビューに応じ、ただ安いだけでなく、「魅力的」なクルマにすることを重要視していると語りました。

ただ安いだけのクルマに意味はない

アマゾン創業者が支援する米国の新興企業スレート・オート(Slate Auto)の設計責任者は、2027年に発売する約2万ドル(約300万円)のシンプルな電動ピックアップトラックについて、「人々は手頃な価格のクルマを持つべきです」と述べ、製品の魅力と手頃な価格という概念は「切り離せない」ものだと主張した。

AUTOCARの取材に応じたティシャ・ジョンソン氏は、先月発表されたスレート・トラックへの「圧倒的な反応」は「驚くべきもので、ある意味で意外だった」としつつも、最終的には手頃な価格で魅力的なクルマを手に入れたいという人々の願望を反映していると述べた。

スレートが発表した新型EV『トラック』
スレートが発表した新型EV『トラック』    スレート

スレート入社前、ジョンソン氏はボルボの北米デザインスタジオでインテリア開発に従事し、その後自動車業界を離れて家電メーカーのワールプールと家具メーカーのハーマンミラーで勤務した。

こうした経験が、新型トラックの機能的で実用的なデザインに反映されているか、また、それが「家電製品」ではなく「自動車」として捉えられるかという質問に対し、ジョンソン氏は、「家電製品として考えたことはありません」と答えた。

「最初に何を作るか検討し始めた時、切り離すことのできない2つの目標がありました。1つ目は、手頃な価格の交通手段、つまり人々が購入できるクルマを提供すること。2つ目は、それを魅力的にすることです」

「自分にぴったりの役割だと確信しました。なぜなら、その2つは不可分だからです。人々は、自分たちの予算に合ったクルマを持つべきなのです」

ジョンソン氏は、スレートの事業が「社会と人々の生活に意味のある影響を与える」という自身のビジョンに響き、長年のキャリア目標を実現する機会を与えてくれたと述べている。

「手頃な価格のモビリティ、手頃な価格のクルマを人々に提供できていないことが、わたしにとって懸念事項でした」

実際、スレート・トラックは、米国で販売されるピックアップトラックの中でも最も低価格の部類に入る見込みで、補助金適用前の目標価格はわずか2万7000ドル(約400万円)だ。

これは、ガソリンエンジン搭載の小型ピックアップ、フォード・マーベリックのエントリーモデルと同等で、現在米国で最も安い電動トラックであるフォードF-150ライトニングの約半分の価格となる。

なぜ低価格化を実現できたのか

スレート・トラックの低価格の鍵は、近年の市販車によくある先進技術や装備の多くを省いた簡素なキャビンだ。例えば、手動調整シート、ステレオレス、タッチスクリーン代わりのデバイスマウント(スマートフォンなどを装着可能)が採用されている。

「一部の人々が『車内環境を損なう』と批判するような、派手なディスプレイを大量に搭載するつもりはありません。わたし達は、人々がテクノロジーに求めているものを理解し、尊重しているだけです。スマートフォンやタブレットを好きなように置いてもらい、運転に集中できるようにするだけです」

ボディ形状を変更するなど、さまざまなカスタマイズが可能だ。
ボディ形状を変更するなど、さまざまなカスタマイズが可能だ。    スレート

これは、「顧客の生活をシンプルにする」だけでなく、製造コストを抑制し、「顧客への利益還元」にもつながるという。似たようなアプローチを採用している自動車メーカーもあるが、ジョンソン氏は他のコスト重視のメーカーの戦略に直接影響を受けたわけではないと述べた。

「わたし達は業界を理解しており、今後も動向を注視していきますが、業界関係者の動向にはほとんど影響を受けていないと言えるでしょう」

スレートの2つ目の理念である「低価格車でも魅力的にすることができる」という考え方は、トラックの多様なパーソナライズオプションに表れている。鮮やかな塗装や力強いボディクラッディング、さまざまなホイールデザイン、さらにはボディスタイルまで選択可能で、DIYキットを利用すれば、必要や好みに応じて箱形のコンパクトSUVやファストバック・クロスオーバーに変身させることもできる。

「目指したのは、見る人が興味深い選択肢を重ね合わせられるようにすること。それがまさにスレートの神髄であり、可能性に満ち溢れているのです」とジョンソン氏は言う。

「何よりもまず、人々にこのクルマを愛してもらいたい。デザインチームとして、その感情的なインパクトと体験が最優先でした。感情的な反応、特に愛情を喚起することです」

このアプローチは商業的にも大きな意味合いを持つ。スレートはインディアナ州の工場で基本モデルラインを1種類のみ生産することで、金型やサプライチェーンのコストを最小限に抑えつつ、可能な限り幅広い層にアピールできる。

「シンプルです。ラインで生産される1つの車種から、数多くの可能性が生まれるようにしました」

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    役職:副編集長
    AUTOCARの若手の副編集長で、大学卒業後、2018年にAUTOCARの一員となる。ウェブサイトの見出し作成や自動車メーカー経営陣へのインタビュー、新型車の試乗などと同様に、印刷所への入稿に頭を悩ませている。これまで運転した中で最高のクルマは、良心的な価格設定のダチア・ジョガー。ただ、今後の人生で1台しか乗れないとしたら、BMW M3ツーリングを選ぶ。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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