VW資本で半世紀を経て復活 伝統x革新のスカウト(1) きっかけはラングラー人気

公開 : 2025.06.05 19:05

知る人ぞ知るオフローダー、スカウトがEVで復活 きっかけはラングラーやブロンコの人気 ラダーフレームを新規開発 伝統と革新を融合 VWグループの実験台ではない UK編集部がトップへ取材

知る人ぞ知るスカウトがEVで復活間近

知る人ぞ知るアメリカのスカウトが、電気自動車で復活を遂げる。フォルクスワーゲン・グループのバックアップを受けて。ただし、巨大市場の受けを狙った、単なるリバイバル・ブランドだとは捉えないでいただきたい。

レトロフューチャーな見た目のSUVへ、関心を示さない人は少ないだろう。同社の態勢は、世界最大級の自動車メーカーへ大きな影響を与える可能性をはらんでいる。高性能な電動SUVを革新的に開発するための、スタートアップ企業だといえる。

スカウト・テラ(プロトタイプ)
スカウト・テラ(プロトタイプ)

スカウト・モーターズのCEOは、フォルクスワーゲン・グループの北米部門を取り仕切る、スコット・キーオ氏が兼務している。だが拠点はアメリカに置き、それ以外のスタッフや施設は完全に独立している。

「速さと革新性、創造性、適応力を備えたアメリカらしい新興ブランドと、世界有数の規模を持つメーカーのスケールメリットや予算規模を、融合させることが狙いです。前例はないと思います」。スカウトの戦略責任者、ライアン・デッカー氏が説明する。

ラングラーブロンコの人気がきっかけ

ここで、スカウトというブランドについて確認しておこう。その起源は、農業用機械や建設用機械を手掛けた、インターナショナル・ハーベスター社が立ち上げたインターナショナル・スカウト社だ。

1950年代に入り、CJ型ジープが人気を高めると、その波へ乗るべく独自の四輪駆動モデルを開発。初代となるスカウト 80は、1961年に発売された。単一モデルの展開で、スカウト 800やスカウト IIへ進化を続け、1980年まで提供されている。

オレンジのスカウト・トラベラーと、ブルー・グリーンのスカウト・テラ(プロトタイプ)
オレンジのスカウト・トラベラーと、ブルー・グリーンのスカウト・テラ(プロトタイプ)

1980年代に経営不振へ陥り、トラックとエンジン部門はナビスターへ社名変更。2021年にフォルクスワーゲン・グループのトレイトン社へ買収され、スカウト・ブランドも手中に収まった。

近年になり、同グループはジープ・ラングラーとフォード・ブロンコという、レトロな見た目のSUVが人気を得ていることへ注目。アメリカ以外では耳馴染みの少ない、スカウトというブランド名を掲げた新規事業を2022年に立ち上げ、現在に至る。

ヘリテージとレガシーを持つカッコいいブランド

「スタートアップでありながら、熱烈なファン層があり、懐かしい記憶を呼び起こすということは、珍しいですよね。ヘリテージとレガシーのある、カッコいいブランドです」。デッカーが続ける。

オリジナルの最後を飾ったスカウト IIの生産終了から45年だが、アメリカでは少なくない人の思い出に含まれている。「今日も、とある男性が近づいてきて、祖父がスカウトに乗っていたと教えてくれました。ブランドの再構築へ関われるなんて、特別ですよ」

スカウトの戦略責任者、ライアン・デッカー氏
スカウトの戦略責任者、ライアン・デッカー氏

果たして、新生スカウトは2024年に2台のコンセプトカーを発表した。ピックアップトラックのテラと、ワゴンボディをまとうSUVのトラベラーだ。どちらも見た目はいかにもアメリカンで、北米価格は5万ドル(約725万円)ほどが予定されている。

スペックはまだ非公表だが、最大トルクは138.0kg-mあり、航続距離は563kmになる予定らしい。発電用エンジンのレンジエクステンダーを積むと804kmへ増え、0-100km/h加速を3.5秒でこなすとか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

伝統x革新のスカウトの前後関係

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