年間150万台 世界最大の自動車工場には巨大な「港」があった ヒョンデ蔚山

公開 : 2025.06.18 07:45

韓国にあるヒョンデの蔚山工場は、5つの工場と専用港を備えた世界最大の自動車工場です。年間150万台を生産し、その大半は世界に輸出されています。周辺には人口110万人の大都市が広がり、産業の中心地となっています。

5つの工場と専用港を併設

自動車運搬船モーニング・クリスティーナ号のブリッジから眺めると、工場出荷直後の何千台ものヒョンデ車が視界を埋め尽くす。

そのうちの最大6000台が、全長380mの運搬船の11層のデッキに積み込まれ、太平洋を渡って米国カリフォルニア州を目指す。「所要時間は約13日です」と船長は言う。「その後、またここに戻って同じ作業を繰り返します」。

ヒョンデ蔚山工場
ヒョンデ蔚山工場

これは、韓国南東海岸にあるヒョンデの蔚山工場で行われている、ユニークな自動車生産プロセスの最終段階だ。工場にドックが併設されており、自動車の生産、試験、出荷がすべて1つの施設内でシームレスに行われている。

ここで生産されるクルマの台数は、なんと年間150万台。これは、英国にある25の工場をすべて合わせた2024年の生産台数の約2倍であり、イタリアの新車販売台数の98%に相当する。世界最大の自動車工場である。

1200エーカー(町1つ分の広さ)の敷地に広がる蔚山工場。高い生産効率のカギを握るのは、その立地環境だ。5つの工場棟に加え、エンジンとトランスミッション工場を擁するだけでなく、世界唯一の専用港が併設された自動車生産施設でもある。年間生産量の75%は世界200か国以上に輸出されている。

ここでは、サンタフェやツーソンといったヒョンデの人気シリーズからジェネシスの全車種まで、17種類のモデルが生産されている。生産ラインは1日18時間稼働している。来年には、6つ目の工場棟となるEV専用工場がオープンし、新型ジェネシスGV90が生産される予定だ。

蔚山工場は、ヒョンデが設立されてからわずか1年後の1968年に開設された。当初はフォードの小さな組立工場として、韓国向けのコルティナが手作業で作られてていた。

今日、蔚山は巨大な都市であり、一歩敷地に入るとその大きさがわかる。工場が軒を連ね、約60万本の木々が立ち並ぶ中、取材班はクルマで第5工場へと向かう。1979年に建設されたこの棟は、当初はゴルフカートを手作業で生産していた。

現在では、ジェネシスG70、G80、G90のセダンが、ヒョンデ・パリセードや水素燃料電池のネッソとともに生産されている。G80用のEVバッテリーもここで作られる。

国内産業の中心地

生産ラインからロールアウトされた完成車は、品質検査を経て、埠頭にある巨大な駐車場へと急行する。取材班はそれを追って、巨大なユーコー(Eukor)の運搬船のそばまでクルマを走らせる。船はあまりにも大きく、スズキ・キャリイが船内の輸送に使われているほどだ。

車両は船の後部にあるスロープから船内に積み込まれる。複数のエラントラがスロープを駆け上がった数分後、ドライバーたちはスロープを駆け下り、ヒョンデ・スターリアに乗り込んで、次の車両へと移動する。

ヒョンデ蔚山工場
ヒョンデ蔚山工場

この作業は毎日行われ、24時間に1隻の船が出港する。こうした生産および輸出方法は、コストと時間の節約につながると工場長は語る。ヒョンデが年間これほど多くの自動車を生産できる大きな理由の1つだという。

工場の周辺に発展した蔚山市は現在、人口110万人(バーミンガムとほぼ同じ人口)の大都市となっている。1968年に工場が開設された時、この地域の人口は3万人で、現在の工場の従業員数(3万4000人)よりも少なかった。

さらにその5年ほど前までは、蔚山は主に漁港だった。現在では、ヒョンデ、2002年に分社化した世界最大の造船会社である現代重工業、SKエナジーが所有する世界第3位の石油精製所などが集まる、韓国の産業の中心地となっている。

ヒョンデの重要性は、街中の至る所で感じられる。ヒョンデの創業者にちなんで名付けられた高速道路があり、病院、学校、レストランなど、多くの施設にヒョンデの名前が付けられている。そしてもちろん、広大な港湾施設も。

港、工場、そしてその周辺に発展した都市は、ヒョンデが抱く大志の証である。案内してくれたガイドは、こう要約している。「蔚山は、今日のヒョンデを形作った街です」。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ウィル・リメル

    Will Rimell

    役職:ニュース編集者
    ニュース編集者としての主な業務は、AUTOCARのニュースの方向性を決定すること、業界トップへのインタビュー、新車発表会の取材、独占情報の発掘など。人と話したり質問したりするのが大好きで、それが大きなニュースにつながることも多い。これまで運転した中で最高のクルマは、アルピーヌA110。軽快な動きと4気筒とは思えないサウンドが素晴らしい。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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