究極の高級ミニ:デヴィル 小さく非力なキャデラック:シマロン 知ってたら博士級? 小さな高級車(3)

公開 : 2025.07.05 17:55

各社が模索してきた、小さな高級車というアイデア 裕福に見られることを好まない富裕層がターゲット 市街地での扱いやすさがメリット 興味深い斬新なクラシック10台を、UK編集部がご紹介

ラドフォードミニ・デヴィル(1963〜1965年)

今でも、コンパクトカーの中で一目置かれるミニ。1960年代へ遡っても、華やかなセレブリティたちに愛されたモデルだった。もちろんそんな富裕層は、ラグジュアリーならもっと良いと考えていた。

ミニ・クーパーやライレー・エルフ、ウーズレー・ホーネットといった、上級志向の選択肢は正規に用意されていた。だが究極といえる高級ミニは、ロールス・ロイスベントレーのボディを手掛けた、コーチビルダーのラドフォード社によって作られている。

ラドフォード・ミニ・デヴィル(1963〜1965年)
ラドフォード・ミニ・デヴィル(1963〜1965年)

多くが特注仕様だったが、デヴィル・パッケージと呼ばれるベーシック仕様も存在した。クーパーかクーパーSがベースで、コノリー・レザーのシートに、ウォールナットのダッシュボードを採用。重くなる車重は、エンジンの専用チューニングでカバーされた。

★マニアな小ネタ:同時期に高級なミニを手掛けたのが、ピーター・セラーズ氏が立ち上げたフーパー社。彼は後にラドフォードへ移籍し、リアに大きなテールゲートを備えたデヴィル GTを1965年に発売している。

プジョー205 ジェントリー(1991年)

傑作ハッチバックのプジョー205へ、1991年に設定されたのがジェントリー。ベースはホットハッチのGTiで、クロームメッキのボディトリムに専用アルミホイール、ダーク・グリーンかシャンパン・ゴールドのボディ塗装で仕立てられた、高級仕様だ。

エンジンはGTi譲りの1.9L 4気筒。ややパワーダウンされていたが、ブレーキとサスペンションは1.6L版のGTiから拝借され、充分なスポーティさを秘めていた。レザー内装に電動サンルーフが備わり、お手頃なオートマティックの205 GTiとも呼べた。

プジョー205 ジェントリー(1991年)
プジョー205 ジェントリー(1991年)

ちなみに、205 ジェントリーは英国市場の限定。生産数は300台だった。

★マニアな小ネタ:エンジンは燃料噴射で、ボンネットはフラット。通常の205のAT仕様はキャブレター仕様のみで、エンジンの高さをカバーするため、僅かに膨らんでいた。

シンガー・シャモア(1964〜1970年)

今はなきヒルマンが生み出したサルーン、インプの人気を上向かせるべく、1964年に追加されたのが、ルーツ・グループ傘下にあったシンガーによるシャモア。ゆったりしたシートにウォールナット・トリムなど、豪華な内装が特長だった。

タコメーターに油温計、ヒーター・ブロワーも標準装備。そのぶん、ライバルモデルの最上級グレードより、価格も安くはなかったが。見た目は、専用ホイールキャップとフロントグリル、サイドストライプで差別化。塗装色も独自の選択肢が用意された。

シンガー・シャモア(1964〜1970年)
シンガー・シャモア(1964〜1970年)

ワイドなタイヤは、操縦性を向上。改善した遮音性が、走行時の質感を高めた。その結果、シャモアは英国で人気を集め、5万台近くが生産されている。

★マニアな小ネタ:シャモアは、軽快に山を駆け回れるカモシカの英語名。シンガーは、そんな特性を小さなサルーンに与えたいと考えたのだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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