4気筒を2基並べて作った3.0L アストン マーティン DBS V8 & トライアンフ・スタッグ(2) 英国製V8の世界

公開 : 2025.07.12 17:50

古くから英国車でも採用されてきた、太いトルクに勇ましい響きのV8エンジン 設計の起源には日産やGMも ベントレーにモーガン、マクラーレンまで、UK編集部が個性的な10台の魅力を再確認

当初の計画では2.5L直6 最高出力は147ps

当初のトライアンフ・スタッグは、同社のサルーン、2000の全長を縮めつつ、2.5L直列6気筒エンジンとドライブトレインを活かす計画だった。しかし、親会社になったブリティッシュ・レイランド・モーター社の混乱に巻き込まれてしまう。

上層部の判断により、動力源は開発が進んでいたV8エンジンへ変更される。結果的には特徴の1つとなったが、メカニズムの詰めは不充分といえた。トライアンフは、広くないエンジンルームへ収めることにも苦労した。

トライアンフ・スタッグと、アストン マーティンDBS V8
トライアンフ・スタッグと、アストン マーティンDBS V8    マックス・エドレストン(Max Edleston)/ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

当初は2.5Lのインジェクションだったが、後に3.0Lへ拡大。ゼニス・ストロンバーグ社製のツインキャブレターが載り、最高出力は147psがうたわれた。

ブリティッシュ・レイランド・モーター社傘下にあったローバーが生産する、よりパワフルで信頼性の高いV8エンジンも検討された可能性はある。だが、そのユニットはGM由来で、主要市場のアメリカでの訴求は難しいと予想されたのかもしれない。

クルマの上に座っているような感覚

信頼性の足を引っ張ったのが、エンジン上部にマウントされ、ギアで駆動されたウオーターポンプ。発売後にオーバーヒートしやすい事実が知れ渡ると、アメリカでの販売は失速してしまう。

最終的にスタッグは、比較的気温の低い英国で数を増やした。残存数は多く、現在のグレートブリテン島では、さほど珍しくないクラシックカーだといっていい。

トライアンフ・スタッグ(1970〜1977年/欧州仕様)
トライアンフ・スタッグ(1970〜1977年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)/ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ボディの高さが低く、運転席へ腰を下ろすと、クルマの上に座っているような感覚。ステアリングコラムは角度を選べ、シートの座面高も調整できる。コラムレーバーに警告灯、パワーウインドウなど、装備も充実している。

今回の車両はスイス仕様の左ハンドルで、英国でレストアを受けたばかり。新車での販売時に防錆処理されており、現存する中では状態が極めて良いという。3速ATはギア比がショートで、高速クルージング時の回転数は4速MTより高めだ。

4気筒を2基組み合わせたV8エンジン

現オーナーのアドリアン・ゴールドバーグ氏は、1983年にブルーのスタッグを購入。1988年にディストリビュータが不調になるまで乗ったが、結婚して子供を授かり、修理するお金を工面できず放置された。

「それでも3年前に、レストアを決意したんです」。と彼が話す。ボンネットを開くと、トライアンフ・ドロマイト用の直列4気筒を2基組み合わせた、3.0L V8エンジンが現れる。太く甘いサウンドが心地いい。

トライアンフ・スタッグ(1970〜1977年/欧州仕様)
トライアンフ・スタッグ(1970〜1977年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)/ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

アクセルペダルを踏み込むと即座にキックダウンし、躍動的に加速する。軽快に操れるステアリングホイールも、走りと調和している。手のひらへの感触は濃くなく、カーブへ積極的に飛び込もうとは思わせないが、限界領域は想像以上に高い。

トライアンフの狙い通り、少し高めの速度域までなら、優れた操縦性を披露する。リラックスした気持ちが良く似合い、クルマとしての完成度は低くない。信頼性に優れ、台数が売れていれば、世代交代を経て生産は続いたかもしれない。

協力:リチャーズ・オブ・イングランド社、EJウォード・モーター・エンジニアーズ社

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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