かつてジャガー凌駕の最速リムジン デイムラー・マジェスティック & ベントレーS2(1) 英国製V8の世界
公開 : 2025.07.13 17:45
古くから英国車でも採用されてきた、太いトルクに勇ましい響きのV8エンジン 設計の起源には日産やGMも ベントレーにモーガン、マクラーレンまで、UK編集部が個性的な10台の魅力を再確認
6000rpmまでスムーズに回る4.6L V8
2.5LのV型8気筒エンジンを搭載したロードスター、デイムラーSP250は1959年のロンドン・モーターショーで話題を集めたが、マジェスティック・メジャーも劣らず注目の的になった。フォーマルなシーンが似合う、フレーム別体の上級サルーンだ。
伸ばされたテール回りと、フロントの丸いエアインテーク以外、見た目は直列6気筒のマジェスティックと同じ。1960年5月に納車が始まり、1968年まで生産は続けられた。全長は約5.7mあり、ラインオフした2044台の内、864台がリムジンだった。

V8エンジンを設計したのは、技術者のエドワード・ターナー氏。バンク角90度の4561ccで、実質的にはSP250の拡大版だと考えて間違いではない。ショートストロークで、点火プラグは半球型の燃焼室中央へ配置され、圧縮比は8:1と控えめだ。
6気筒ユニットより長さは約180mm短く、13.2kgも軽量で、エンジンルーム内の変更点はステアリングラック程度。最高出力は223psと高くはなかったが、クランクシャフトは5枚のベアリングで支えられ、6000rpmまでスムーズに回った。
当時最速のサルーンに君臨 弱点といえたAT
トランスミッションはボルグワーナー社製のオートマティックだったが、マジェスティック・メジャーは当時最速のサルーンに君臨した。9.7秒の0-100km/h加速と、197km/hの最高速度は、同時期のジャガーでは超えることができなかった。
ご登場願った車両の現オーナーは、ピーター・ブリストウ氏。「ATは弱点といえましたね。このエンジンには役不足でした。GMのハイドラマティックを選ぶべきだったといえます」。と説明する。

英国のグラハム・ホワイトハウス社によってレストア済みで、状態は素晴らしい。ATは変速ポイントが微調整され、トップギアを選びたがる傾向を抑えている。2本出しのテールパイプから快音を響かせ、力強く加速してみせる。
ウォールナット張りのダッシュボードには、メーター類が所狭しと並ぶ。スピードメーターの下にあるスピードホールド・スイッチで、2速を維持して回転数を引っ張れる。タコメーターは助手席側だが。ウインカーレバーは、ステアリングのハブ部分だ。
動力性能と同じくらい操縦性も素晴らしい
驚くほど効くブレーキはダンロップ社製で、ロッキード社製のサーボアシストが備わる。カーブでのボディロールは抑えられ、アンダーステアも小さい。動力性能と同じくらい、操縦性も素晴らしい。
関心を抱かれる読者もいらっしゃるかと思うが、V8エンジンを積んだデイムラーのリムジンは希少性が増す一方。現在の残存数は、約20台とのこと。ブリストウは1967年から、この1964年式を維持しているそうで、愛用を続け距離を重ねてきたという。

ボディは再塗装され、エンジンはリビルド済み。58年間で手つかずなのは、リアアクスルだけだとか。ボディパネル以外、殆どの部品は今でも入手できると話す。1960年代ですら、新しいフェンダーパネルは200ポンドもしたと彼が振り返る。
「自分は2代目のオーナーです。最初のオーナーは、造船業者の経営者でした。サビが出始めていたのですが、車検が切れた状態で100ポンドで売られていたんです」
この続きは、デイムラー・マジェスティック & ベントレーS2(2)にて。








































































































