不気味なほど外界から隔離 デイムラー・マジェスティック & ベントレーS2(2) 英国製V8の世界
公開 : 2025.07.13 17:50
古くから英国車でも採用されてきた、太いトルクに勇ましい響きのV8エンジン 設計の起源には日産やGMも ベントレーにモーガン、マクラーレンまで、UK編集部が個性的な10台の魅力を再確認
最高出力と最大トルクは非公表
V8エンジンの英国製リムジンといえば、ロールス・ロイスとベントレーは外せない。当初、4.9L直列6気筒を搭載していたシルバークラウドとSシリーズへ、北米市場での訴求力を高めるべく用意されたのが、Lシリーズと呼ばれる新ユニットだ。
排気量は6230ccで、オールアルミ製。高級サルーンとして期待される動力性能を実現し、重さは直6エンジンと同等で、静寂性では上回った。ただし、信頼性が向上したわけではない。整備性は悪く、点火プラグの交換にはフロントタイヤを外す必要があった。

この頃のベントレーはロールス・ロイス傘下にあり、最高出力と最大トルクは親会社に習って非公表。高い回転数は上質さを奪う原因とみなされ、レブリミットは4500rpmに設定された。
長距離クルージングへ最適化されていたが、現実的な燃費は4.2-5.0km/Lと褒めにくかった。満タンでの航続距離は400km程度。当時は、これで充分だとみなされた。
不気味なほど外界から隔離 空を漂う雲のよう
S2の最高速度は181km/hで、0-100km/h加速は10.0秒と充分以上。160km/hでも、無音に近い空間で移動することが可能だった。実際に発進させてみると、不気味なほど外界から隔離されていることへ驚く。ロードノイズも風切り音も、最小限だ。
運転席へ座れば、長いボンネットが前方に伸び、まるで道の支配者のよう。エンジンは、遠く離れた場所で静かにガソリンを燃やす。変速も、3速から4速へのシフトアップ以外、殆ど感知できない。空を漂う雲のように、滑走する。

それでいて、S2はかなり機敏。ステアリングホイールはシームレスに回せ、手応えも充分に伝わる。ボディロールは小さく、ブレーキもドラムだが頼もしい。カーブが連続する道へ飛び込めば、不思議と車重が軽く感じられ、小気味いいペースを保てる。
新車時で6000ポンドの英国価格は、主な競合モデルの2倍だった。そのかわり、動的な洗練度は桁違い。高級な素材が見事な品質で仕立てられた、最高水準のサルーンを入手できた。ウッドパネルの艶やスイッチの感触1つとっても、唸ってしまう。
好調を保つには乗ることが何より大切
生産数は2000台以下と多くないが、現存率は低くない。今回の車両は、ヒリアー・ヒル社の手で走れる状態へ戻されたという。「販売中のSシリーズは少なくありませんが、本当に状態の良い個体は想像以上に少ないんです」。同社のコナー・ノートン氏が話す。
適切に設定すれば、遥かに運転しやすくなるとも説明する。「この1台は、現オーナーの要望で2000年に調達しました。クラシックカーのラリーイベントや長距離旅行を楽しまれていましたが、今はお嬢さんと義理の息子さんが大切に乗られています」

「好調を保つには、乗ってあげることが1番大切なんですよ」。と微笑むノートンは現在、すべてのネジとボルトを新調する水準で、ベントレーS3をレストア中。ロングホイールベースのシルバークラウドも、レストアを頼まれているとのこと。
「最近、この世代のベントレーやロールス・ロイスは価格が上昇しています。価値が認知され、お金が費やされるようになってきましたね」
協力:ヒリアー・ヒル社、ローレンス・ジョーンズ氏







































































































