フェラーリF80(2) パフォーマンス追求V6 HVの「正解」 歴代以上の壮大な感動はあるか?

公開 : 2025.07.14 19:10

499Pとの関係が深い、10年に1度の特別なF80 カーボン製シェルで799台限定 3.0L V6に3モーターで1200ps ピッチとロールを見事に抑制 圧倒的パフォーマンスに心打たれる UK編集部が試乗

パフォーマンスを追求したV6ハイブリッド

3.0L V6ツインターボエンジンに、3基の駆動用モーターが載るフェラーリF80。ハイブリッドと呼べるが、もちろん、燃費を追求したシステムではない。同社の技術者、ステファノ・ヴァリスコ氏は、パフォーマンスだけを求めて開発したと認める。

カーボン製シェルの直後にマウントされる、駆動用バッテリーは2.3kWhと小容量。クオリファイ・モードで飛ばせば、試乗したミサノ・サーキット1周で充電は尽きるはず。とにかく、F80は桁外れに速い。ロケット級に。

フェラーリF80(欧州仕様)
フェラーリF80(欧州仕様)

ターボへ内蔵される電気モーターによって、ターボラグは皆無。アイドリングの900rpmから凄まじくパワフルで、9200rpmまで勢いは衰えない。0-100km/h加速が2.15秒なだけでなく、0-200km/h加速は5.75秒。ラ・フェラーリは、6.9秒だった。

V6エンジンは、通称ピッコリーノV12の6気筒版。V12へ迫る音響が目指されている。鋭く回り、簡単にレブリミットへ当たる。プロのドライバーでも、そうらしい。8速デュアルクラッチATも世界最高峰。シフトアップは瞬間的で、シフトダウンは理想的だ。

ピッチとロールを見事に抑制 衝撃吸収性に唸る

ミサノ・サーキットには、マップで眺めるとストレートでも、実際は超高速コーナーという区間がある。そこでは、ダウンフォースの効果が如実だった。ピッチとロールは見事に抑制され、感覚的に傾きを感じられる程度。縁石での衝撃吸収性に唸る。

ステアリングホイールは、望ましい重さで安定。ロックトゥロックは、フェラーリらしく2回転とクイックだが、反応は終始リニア。過敏でも神経質でもない。低速コーナーでは、精緻な旋回性へ魅了される。

フェラーリF80(欧州仕様)
フェラーリF80(欧州仕様)

ブレーキのフィーリングもいうことなし。ブレーキ制御のトルクベクタリングの効きをうっすら感じるが、テールスライドは巧みに抑制。フロント側の2基のモーターが、ストレート目がけてライン補正しようとする。この方が、最速ラップを刻めるからだろう。

別の意味で印象的だったのが、外で見ている時の静かさ。ストレートエンドでは220km/hを超えているはずだが、聞こえるのは空気を切り裂く「シュゴォー」という音だけ。騒音規制を踏まえたものだが、超音速戦闘機のようだったとカメラマンは話していた。

アウディR10 TDIと運転体験は近いかも

すべての電子アシストを切ると、一転して自由度が増す。コーナーでは、ほんのり定常的なアンダーステア。パワーを掛けると、安定したオーバーステアへ推移する。フロントアクスルの限界を察知し、強制的な介入があるまで、その状態を続けられる。

ドリフトにも興じられるが、F80の意図とは違う。8割程度の努力で、大半のモデルより遥かに速く周回できる。電気の存在感が強く、ドラマチックさは薄いかもしれないが、圧倒的なパフォーマンスに心が打たれる。

フェラーリF80(欧州仕様)
フェラーリF80(欧州仕様)

筆者が持つ記憶の限りでは、ル・マン・プロトタイプのアウディR10 TDIと運転体験は近いかもしれない。つま先が持ち上がった運転姿勢に、精緻で手応えのある操縦系、水平に握るステアリングホイール、暴力的ではない加速など。

ロードカーとしての魅力は、想像以上。ダンパーは3段階に調整でき、乗り心地はしなやか。全幅は広いが、神経をすり減らすほどではなく、没入感は深い。なお、任意にダウンフォースは調整できない。旋回中の低下などは、望ましくないからだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フェラーリF80の前後関係

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