カングー・ディーゼルは、懐かしいルノーの味がした【新米編集長コラム#40】

公開 : 2025.07.27 12:05

個人的にカングーらしいと思う部分は全て健在

いいところはたくさんある。まずはシート。座面の厚みがしっかりあって、新車だからかまだ張りが強い感じはしたが、長距離でもあまり疲れを感じさせなかった。

ディーゼルエンジンも素晴らしい。トルクがしっかりあって走りやすく、高速中心で1000kmは余裕で走れそうな燃費だ。事実、800kmくらい走って給油したら、メーターが残り1130kmを表示したほど。

高速中心なら1000km以上は余裕で走りそうなディーゼルエンジン。
高速中心なら1000km以上は余裕で走りそうなディーゼルエンジン。    平井大介

背の高いクルマであるが、重心の高さや上屋の重さを感じさせず、コーナーでも足がしっかり粘って意外とよく曲がるのも好きなところだ。現行型がデビューした時に大きくなった印象も受けたが、全幅1860mmは昨今のクルマの中ではそれほど大きくなく、ステアリングもよく切れて、狭い道での取り回しは想像以上によかった。

ADASの世代が旧かったり、観音開きのテールゲートが左ハンドル向けで、右側のリア窓が小さくて視認性が低いのは歴代ずっとなのでさておき、Aピラーの角度が個人的なドラポジと合わないのか、何度かブラインドになる場面があったのは唯一気になった。

Aピラー手前の窓がロザンジュ、つまりひし形のルノー・エンブレムになっているのは素敵なので、実に惜しい部分ではある。

しかし、相変わらず収納スペースの多い室内や、ブラックバンパーの商用車感などなど、個人的にカングーらしいと思う部分は全て健在。特にこの限定車はオレンジの発色がよく、初夏の日差しを浴びて、とにかく魅力的に感じたのである。今回取材したのはATだが、MTもあるのか……と、取材中も取材後もHPを真剣に見たのは本当の話だ。

ずっとこのままであるとは考えにくい

電動化や、排ガス規制や安全基準への合致など、現代のクルマはクリアすべき課題が実に多い。もちろん、それ自体を否定する気は毛頭なく、少なくとも自動車が社会悪にだけはなって欲しくないと心の底から願っている。

だから、特にディーゼルエンジンを筆頭に、カングーがずっとこのままであるとは考えにくいからこそ、初代からの雰囲気を受け継いでいる現行モデルに新車で乗るのは、今がラストチャンスではないかと思うのだ。

初代からの雰囲気を受け継いでいる現行モデルに乗るのは、今がラストチャンスかもしれない。
初代からの雰囲気を受け継いでいる現行モデルに乗るのは、今がラストチャンスかもしれない。    平井大介

今回乗っていて思い浮かんだワードは、『懐かしいルノーの味がする』というものだった。良し悪しではなくあくまで好みの話として、最近のルノーでは失われつつあるものがカングーには残されている。

どうやらルノー・カングー・クルール・ディーゼルが眩しく見えたのは、日差しやボディカラーのせいではないのかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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