アストン マーティンの「未来」を形作った ローレンス・ストロール氏:リーダー賞 AUTOCARアワード2025

公開 : 2025.07.31 11:45

ロードカー事業の再生にも自信を示す

これまでの会話は主にF1についてだったが、ストロール氏は、ロードカー事業もレース事業と同じくらい重要であることをはっきりと述べている。それが、多大な労力を費やして、ベントレーやJLRの元代表であるエイドリアン・ホールマーク氏をアストンに迎え入れた理由の1つだ。

ホールマーク氏は、業界トップクラスの戦略家として知られており、劇的な業績回復を成し遂げるためにまさに必要な人物だ。ストロール氏は、アストン マーティンの量産モデルは近年大きく改善されたと主張しており、AUTOCAR英国編集部のテスター(試乗)チームも同意見である。SUVのDBXは成功を収め、アストンは今年、史上初となるミドシップエンジン搭載のプラグインハイブリッド車『ヴァルハラ』を投入する。

アストン マーティン・ヴァルハラ
アストン マーティン・ヴァルハラ

ストロール氏の下、同社は収益性が高く、持続的な成長の実現に注力している。しかし、最近の資金注入や投資家からの支援にもかかわらず、株価は依然として低迷している。

そこで大きな疑問が浮かんでくる。ストロール氏は、アストン マーティンのロードカー事業の成功にどれほど自身を持っているのだろうか? 彼はその質問に、リラックスして答えた。

「人生でこれほど確信を持ったことは一度もありません。自分が信じないものに投資を続けることはあり得ないのです。もしそうしていたら、わたしが2億ポンド(約400億円)を投じて作ったこの場所に、皆さんが今ここに座っていることはなかったでしょう。アストン マーティンには素晴らしい未来があると信じています」

ストロール氏は問題があることも認めている。コロナ禍の直前に会社を買収したのは確かに不利だったし、それ以前にもサプライチェーンに大きな問題があった。アストンはDB12の生産遅延や、新しいインフォテインメント・システム用の新プラットフォームの統合に苦労していた。

しかし、ストロール氏は、製品ポートフォリオはアストン マーティンの歴史上かつてないほど充実しており、これはまだ始まりに過ぎないと主張している。自身の成功の指標である利益についてはどうだろうか?

「すでに述べた通り、今年の後半にはキャッシュフローがプラスになります。つまり、来年は黒字になるということです。わたしがこの会社を引き継いだ当時、年間3億ポンド(約600億円)の赤字でした。今年の後半は、重要な転換点となるでしょう。10年計画の最初の5年で成果が出ると言いましたが、まさにその通りになっています。今は成長に全力を注いでいます」

ストロール氏の情熱は伝染力があり、一日中話していたい気分になるが、彼の多忙なスケジュールを考慮し、最後にもう1つだけ質問をした。ストロール氏は、アストン マーティンの再建を自分のライフワークだと考えているのだろうか? 世界の他の自動車会社のトップなら、この質問は避けようとするだろう。

正直なところ、この質問に対して率直な答えを返してくれるとは期待していなかった。しかし、ストロール氏はすぐにこう答えた。「ええ、そうです」

「わたしは7月に66歳になりますが、あと10年、おそらく15年は仕事を続けるつもりです。わたしは働かなければなりません。経済的な理由からではなく、精神的な理由からです」

では、成功とはどのようなものになるのだろうか?

「わたしの考えはこうです」とストロール氏は言う。「フェラーリは年間1万4000台の自動車を製造する企業です。販売促進のためにF1チームを擁し、その価値は約900億ポンドに達します。当社は、規律ある生産量の拡大と収益性の向上を継続し、その販売促進のためにF1チームを擁しています。その潜在的な価値はどれほどになるか、ご想像いただけるでしょうか? 答えは、皆さんご自身で考えてみてほしい」

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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