乗るほど迫れる楽しさと鋭さ 最新 ミニJCWで真夏の小旅行(2) 電動版へ勝る運転体験

公開 : 2025.08.08 19:10

機敏なミニJCWで真夏の小旅行へ出かけたUK編集部 走るのはノースヨークシャー州 動的能力を追求したがゆえの荒削りさ 制限速度内でも不満なく味わえる個性 新世代エンジン版の魅力へ迫る

ボディを軽々と引っ張る力強いトルク

休日の渋滞にはまだ時間が早いのに、道の流れが遅い。スリーコースト・ヴィンテージ・トラクター・ランという、トラクターのイベントに巻き込まれてしまった。

低い速度域でも、ミニJCWのエンジンからはターボの高音がうっすら聞こえる。スポーツ度の高いドライブモードでは、マフラーからバックファイヤーが放たれる。見た目が瓜二つの電動版より、確かに魅力は濃密。車重は320kgも軽い。

ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW/英国仕様)
ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

トラクターの一団へ別れを告げ、パワートレインを開放する。力強いトルクが、先代より僅かに大きくなったボディを軽々と引っ張る。速度域が上昇し、ダンパーへ掛かる負荷が増すと、乗り心地は落ち着いてくる。

目前に広がる景色へ、頬が緩む。起伏が大きい果てしない原野へ、アスファルトがうねるように伸びている。都心で毎日を過ごしている筆者にとって、夢のような眺めだ。ただし、羊の大群と時々出くわすが。

乗り慣れるほど、楽しさや鋭さへ繋がる

清浄な原風景へ、荒々しいミニJCWは少し不釣り合いかもしれない。丁寧にレストアされた、MGやヒーレーの方が相応しいはず。とはいえ、小柄で活発なハッチバックにとっても、完全なアウェーではない。そんな考えは、流れる景色とともにすぐに忘れる。

シャシーの限界へ迫れば、左右で変化するグリップ力を感じ取れる。今はなき、フォードフィエスタ ST級の繊細さはないものの、ラフなマナーが固有の充足感を生む。

ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW/英国仕様)
ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

最高峰のドライバーズカーは、乗り手のレベルに応じて操れ、導くようにスキルを高めてくれる。対してミニJCWは、シャシーやパワートレインのチューニングに合わせて、操ることを求めてくる。

乗り慣れるほど、楽しさや鋭さへ繋がっていく。時間をともにするほど、荒削りな個性へ共感できるようになる。このクラスのライバルは、英国では遥かに従順なフォルクスワーゲン・ポロ GTI程度になってしまった。それと、好ましい対極だろう。

電動版へ勝るエンジン版ミニJCWの運転体験

車内空間は、現代のミニらしくデザインの意識が高い。内装素材にはコダワリを感じ、円盤状のOLEDタッチモニターが、ユーモアのセンスを象徴している。アップル・カープレイの表示が、一角の小さなエリアに限られるとしても、強みの一部といえる。

グリーン・モードへ切り替えると、タッチモニターへハチドリやチーターのイラストが描かれた。気持ちを穏やかに、趣ある漁村の小道をさまよってみては?と促すように。

ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW/英国仕様)
ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

エンジン版のミニJCWは、電気モーター版のそれより、勝る部分が少なくない。ワインディングやサーキットでの運転体験で、バッテリーEVはまだ追いついていない。もう少し時間がかかるだろう。航続距離も、気にしないでいい。

ノースヨークシャー州は、偶然との出会いや、道へ迷うことを楽しめる環境にある。敏腕ホットハッチも、ピタリとハマる。遠くない未来に、静寂の中で駆け巡る素晴らしさも、想像できたけれど。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブン・ドビー

    Stephen Dobie

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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