【ロールス・ロイス・ファントム100周年】音楽界のスターたちが愛したファントム

公開 : 2025.08.28 08:05

リベラーチェ

天才的なピアノ演奏ときらびやかなステージ演出で知られるリベラーチェもまた、ロールス・ロイスにその生き様を投影した巨匠の一人だ。クラシックとポップスを融合させた独特な演奏で才を発揮した彼は、1950〜60年代にテレビ番組とラスベガスでの長期公演により、世界で最も高い報酬を得るエンターテイナーとなった。

『ミスター・ショーマンシップ』というニックネームを持つ彼の豪奢な演出の1つに1961年式ファントムVがある。このクルマのボディは細かな鏡片で覆われており、ラスベガス・ヒルトンでの公演ではステージ上に登場し観客を魅了した。このファントムは数々の受賞歴を持つリベラーチェの伝記映画『恋するリベラーチェ(Behind the Candelabra)』にも登場し、リベラーチェを演じるマイケル・ダグラスがその短くも印象的な走行シーンを再現している。

リベラーチェの派手なステージ演出の1つとして用いられた、鏡張りのファントムV。
リベラーチェの派手なステージ演出の1つとして用いられた、鏡張りのファントムV。    ロールス・ロイス

サー・エルトン・ジョン

リベラーチェの演奏スタイルは、当時の多くのパフォーマーに影響を与えた。その中には今日ではサー・エルトン・ジョンとして知られる新進気鋭のピアニスト、レジナルド・ドワイトもまた、その1人であった。

彼は敬愛するリベラーチェに倣い、後年に複数台のファントムを所有していた。1973年にホワイトのファントムVIでマンチェスター公演へと向かう途中、サー・エルトンはショールームのウインドウに展示されていた最新モデルに目を奪われた。彼は専属運転手に停車するよう指示し、その場で購入手続きを済ませると、新たなファントムに乗り換えて会場へと向かったという。

後に彼はこのファントムを、ブラックのペイントにブラック・レザーの内装、スモークガラスのウインドウに一新し、テレビ、ビデオ・プレーヤー、さらにはファクシミリまで搭載した。なかでも特筆すべきはビスポークのオーディオ・システムで、あまりに強大な出力のため、リアウインドウを音量を上げても割れないように補強する必要があったという。

また、サー・エルトンは、鮮やかなピンクとホワイトのツートーン仕上げの外装と、それに調和する内装をビスポークしたファントムVも所有していた。

当時のソビエト連邦で行われたツアーでは、報酬が現金ではなく石炭で支払われたため、参加したミュージシャンたちに報酬を支払うことができなかったという。その代わりとして彼は、このファントムをパーカッショニストのレイ・パーカーに贈り、後にクーパーはこのクルマで、当時まだ少年であったデーモン・アルバーンを学校へ迎えにいったという。

アルバーンは後に『ブラー(Blur)』のフロントマンとしてスターダムを築いた。2020年にはアルバーン率いるバーチャル・バンド『ゴリラズ(Gorillaz)』が『ザ・ピンク・ファントム(The Pink Phantom)』を制作、ゲスト・ボーカリストとしてサー・エルトンが参加することで、歴史は見事に円環を描いたのだった。

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  • 執筆

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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