20年前、中国車の欧州進出はうまくいかなかった 試行錯誤と失敗 英国記者の視点

公開 : 2025.10.07 18:05

今では英国の至るところで中国車を見かけるようになりましたが、昔からそうだったわけではありません。吉利汽車や奇瑞汽車など複数のメーカーが欧州進出を試み、挫折を繰り返してきました。AUTOCAR英国記者コラムです。

昔は失敗続きだった中国ブランド

中国の吉利汽車は最近、英国で自社ブランド(吉利)の販売を開始すると発表した。当初の計画より10年以上遅れてのことだ。

AUTOCARが初めて吉利を取り上げたのは2004年、中国の新興市場と産業に関するレポートの中でだった。吉利初の市販車である『ハオチン』は、当時中国で最も安価なクルマだった。驚くことに価格は2400ポンド(約48万円)相当だが、装備は極めて簡素で、旧型のダイハツ・シャレードをベースにしていた。

吉利が英国投入を計画していた『エムグランドEC7』
吉利が英国投入を計画していた『エムグランドEC7』

2年後、吉利は英国に本拠を置くマンガン・ブロンズ・ホールディングス(MBH)と合弁会社を設立。上海でロンドン名物のブラックキャブ『LTI TX4』を生産し、中国のタクシー運転手を使い古されたフォルクスワーゲン・ジェッタやサンタナから引き離す計画だった。

上海モーターショーでは金色に塗装したX4を展示するなど、アピールに力を入れたが、この計画はうまくいかなかった。現地のタクシー運転手にとって高価だったこと、そして中国都市部でディーゼルエンジンが規制されたことが原因だ。

2011年末、財務状況が悪化したMBHは英国での吉利車の販売に乗り出す。最初に投入しようとしたのは『エムグランドEC7』だ。Cセグメントに相当するサイズでありながら、わずか1万ポンド(約200万円)というBセグメント車並みの価格設定がウリの、地味なハッチバック/セダンだった。

MBHは40店舗の販売網構築を計画し、当時CEOのジョン・ラッセル氏はこう述べた。「キアヒョンデは英国で成功した。当社も吉利と協力すれば同様の成功を収められる」

同氏はさらに、今後5年間で毎年新型車を投入していくと付け加えた。次のモデルはフォード・モンデオに対抗する『エムグランドEC8』、続いて小型MPV、小型SUV、そして「中国人の実験的スピリッツを強調するモデル」が予定されていた。

おそらくラッセル氏は『グリーグル・パンダ(Gleagle Panda)』という小型車のことを示唆していたのだろう。もしそうなら、英国人は皆感謝すべきだ。その大きな目とぽかんと開いた口は、心臓の弱い人には耐えられないものだったから。

AUTOCARの中国担当記者は2012年初頭にエムグランドEC7を試乗し、硬くて安っぽい内装、燃費が悪くてパワー不足の1.8Lガソリンエンジン、ぎこちないマニュアル・トランスミッション、柔らかい乗り心地、軽いステアリングをレポートした。ただ、まあ、価格は1万ポンド程度だ。

しかし、2012年10月、MBHは390万ポンド(約7億8000万円)の赤字を抱えて経営破綻した。2007年以降、利益を上げることができていなかったのだ。

すでに同社の株式の20%を保有していた吉利は、タクシー製造子会社のLTIを救済し、英国への自動車輸出計画を断念した。これはブラックキャブの開発に専念するためだったのか、将来の英国進出に向けたブランドイメージ保護のためだったのか、筆者にはわからない。

もしかしたらその両方だったのかもしれないが、上海汽車(SAIC)が英国でのMGブランド再建に要した膨大な時間を考えれば、賢明な判断、少なくとも幸運だったと言える。

記事に関わった人々

  • 執筆

    クリス・カルマー

    Kris Culmer

    役職:主任副編集長
    AUTOCARのオンラインおよび印刷版で公開されるすべての記事の編集と事実確認を担当している。自動車業界に関する報道の経験は8年以上になる。ニュースやレビューも頻繁に寄稿しており、専門分野はモータースポーツ。F1ドライバーへの取材経験もある。また、歴史に強い関心を持ち、1895年まで遡る AUTOCAR誌 のアーカイブの管理も担当している。これまで運転した中で最高のクルマは、BMW M2。その他、スバルBRZ、トヨタGR86、マツダMX-5など、パワーに頼りすぎない軽量車も好き。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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