儚く散ったGMの夢!1997年に日本上陸もしたアメリカ製小型車『サターン』【第5水曜日の男、遠藤イヅルの令和的ヤングタイマー列伝:第5回】

公開 : 2025.10.29 17:05

本気で売る姿勢を見せていたサターンジャパン

日本法人『サターンジャパン』でも、販売はアメリカで成功した手法を踏襲。『礼を尽くす会社、礼を尽くすクルマ』というキャッチコピーが思い出されます。購入後もサターンから感謝やクルマの調子について本社社長名で手紙が届くなど、『礼』を感じられるサービスが行われました。

面白いのは、「I Say Saturn!」とディーラースタッフが声をあげる納車式で、こちらも本国から輸入されています。販売網にはJR東日本も参加しており、新宿のタイムズスクエアに『サターン新宿ステーション』という店舗を構えたことも話題を呼びましたね。

コンパクトでスタイリッシュなサターンワゴン(2代目Sシリーズ、SW)。
コンパクトでスタイリッシュなサターンワゴン(2代目Sシリーズ、SW)。    サターン

グレードは単一で、当時としては十分以上のフル装備でしたが、全車にMT車の設定があったのはちょっとオドロキ。ステアリング位置は右のみです。そして価格はなんとセダンの5MTで156万円。1999年発売のプジョー206が最安値で165万円だったことを思うとまさに破格です。

実際にはこの仕様だとアルミホイールやフォグランプなどはつかないので。豊富なパッケージオプションを選ぶ人が多かったと思います。それでもセダンでは、オプションマシマシでレザーシートを奢っても190万円以下に収まりました。ボディカラーが6色、内装も4色が用意され、日本でサターンを売る『本気』がヒシヒシと感じられました。

独自性を失ったブランドの悲しい末路

こんなにリーズナブルで装備も豊富なら売れたのではないか、と思うのですが、クルマという製品は難しいもの。本国アメリカでは、サターンに開発資金を吸われることに他ブランドが難色を示したほか、2000年以降はクロスオーバーSUVやミニバン、ロードスターなどを発売。

サターンの独自性は薄くなり、晩年はオペルをそのまま売るようになりました。2000年後半の金融危機やGMの経営が傾いたこともあり、2010年になってサターンは25年の生涯を終えています。

1999年に追加された、リアアクセスドア付きの3ドアクーペ。なんと日本でも追加導入されました。
1999年に追加された、リアアクセスドア付きの3ドアクーペ。なんと日本でも追加導入されました。    サターン

日本では初期に故障が多く発生、そして全体的な品質感の低さは、厳しい視点を持つ日本車ユーザーの食指は動かせなかったのです。ディーラー網も少なく、販売は低迷しました。安価なだけでは売れないのです。そしてたった4年で日本から撤退してしまいました。

個人的には、日本車を目指した小型車であろうとも隠しきれないGMっぽさ、アメリカ車っぽさに当時から魅力を感じていました。でも実際にディーラー(サターンではリテーラーと呼んでいました)に行くと、たしかに『安っぽい』のです。シートも薄く、車内もあまり広くなかった印象があります。

最も売れた年で1500台に届かず、合計でも4000台ほどしか売れなかったサターンだけに、中古車検索サイトで探してもまず見つからず、あってもローダウンや派手な改造が施されていたりします。

V8マッスルカーではなく、アメリカの街にふつうに停めてある小型車にも強く惹かれるぼくとしては、もし程度の良い個体が出てきたら……とドキドキしますが、いまサターンを目の前にしたら、どんな感想を得るのでしょうか。

次回の『第5水曜日の男』は何と12月31日。早いもので2025年のラスト回かつ大晦日ですので、また面白いクルマを取り上げたいと思います。ご期待ください。

記事に関わった人々

  • 執筆

    遠藤イヅル

    Izuru Endo

    1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター兼ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持つ。コピックマーカーで描くアナログイラストを得意とする。実用車や商用車を好み、希少性が高い車種を乗り継ぐ。現在の所有は1987年式日産VWサンタナ、1985年式日産サニーカリフォルニア、2013年式ルノー・ルーテシア。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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