ランボルギーニ・シアンが代表例 新開発スーパーキャパシタで出力倍増 重さ4kgの箱に詰まったハイブリッド車の未来 

公開 : 2025.11.07 07:25

英国のアロトロープ・エナジー社は新開発の小型軽量スーパーキャパシタを発表しました。1kgあたりの蓄電容量が大きく、ハイブリッド車に搭載すれば排出ガス削減、燃費向上、出力アップにつながるとされています。

低燃費・高出力化を実現へ

スーパーキャパシタ(別名:ウルトラキャパシタ)は長年、電動化の分野で注目を集めてきた。しかし、シンプルな作りでありながら量産車への採用は限られており、ランボルギーニ・シアンがその代表例だ。

英国企業アロトロープ・エナジー(Allotrope Energy)は、既存製品と比べて小型軽量かつエネルギー密度が2倍の新型スーパーキャパシタを開発したと発表した。同社の新製品『リグナボルト(Lignavolt)』は、重量あたりの蓄電容量が従来の7~8Wh/kgに対し14~15Wh/kgに達するという。コストも「数分の1」に抑えられるとされる。

ランボルギーニ・シアン
ランボルギーニ・シアン

キャパシタはほぼすべての電気製品に搭載される蓄電装置だ。バッテリーと同様に電気を蓄えたり放出したりするが、いくつか大きな違いがある。キャパシタは絶縁層で隔てられた2つの電極から成り、電圧を加えられると両電極に電荷が蓄積される。バッテリーとは異なり化学反応は発生しないため、充放電速度が極めて速い。

アロトロープ・エナジー社の二重層キャパシタの核心は、持続可能な方法で製造されたリグナボルト素材にある。この素材は製紙産業の廃棄物である木材パルプから生成されるリグニンを基にしている。

キャパシタの欠点はエネルギー密度が大幅に低いことだ。バッテリーが大量の電力を蓄えられるのに対し、キャパシタは負荷(モーターや電気機器など)に接続されると瞬時に放電してしまう。スーパーキャパシタはまさにその名の通り、家電製品に使われるようなキャパシタ(コンデンサ)の大型・高出力版である。

電動化ではバッテリーが中心的な役割を担う

ホンダが四半世紀前に燃料電池車『FCX』を発表した際、燃料電池システムと回生ブレーキの電気エネルギーはスーパーキャパシタに蓄えられた。しかし、高電圧のEV・ハイブリッド車向けや、48Vマイルドハイブリッド車向けなどでバッテリー技術に膨大なリソースが投入された結果、クルマの電動化ではバッテリーが中心的な役割を担うようになった。

とはいえ、主に内燃機関(燃料)で走行しながら、ブレーキの回生エネルギー(電力)を加速時に利用するハイブリッド車においては、スーパーキャパシタの利点は失われていない。

アロトロープ・エナジー社が発表した14~15Wh/kgの容量を持つスーパーキャパシタ。
アロトロープ・エナジー社が発表した14~15Wh/kgの容量を持つスーパーキャパシタ。

アロトロープ・エナジー社によれば、中程度のブレーキ時でさえ回生エネルギーを100%回収するには巨大なリチウムイオンバッテリーが必要で、物理的にもコスト的にも非現実的だという。これに対し、同社の新製品は重量1kgのスーパーキャパシタから75psの出力が可能で、これは同等容量のリチウムイオンバッテリーの50倍に相当する。

この技術を使えば、ハイブリッド・パワートレインの加速をより多く電気モーターで担えるようになる。その結果、内燃機関の小型化が可能となり、排出ガスと燃料消費の削減につながる。

アロトロープ・エナジー社は、平均的なファミリー向けSUVの出力を2倍にするのに必要なスーパーキャパシタの重量は、4kg以下で済むと主張している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    役職:技術編集者
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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