イングリッシュ・コルベットの異名 トライアンフTR8(1) とんがりボディにV8エンジン 目標はラリーカーの量産版

公開 : 2026.06.07 17:45

目指したのはラリーカーの量産版

トライアンフ側にも、諦めない空気は残っていた。1980年12月、BLでモータースポーツ部門を率いたリチャード・ハードウェル氏から、ソリハル工場長のジョン・ミックルライトへ届けられた手紙には、次のように記されていた。

「グリーンのTR8は、モータースポーツ部門でエンジンとサスペンションの改造を受けています。英国と欧州のスポーツカー市場向けとして、仕様を決めるために」。ワークス仕様のTR7 V8を仕上げた技術者は、密かに作業を進めていた。

トライアンフTR8(1979~1981年/北米仕様)
トライアンフTR8(1979~1981年/北米仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

当時TR7の製品企画を仕切っていたデニス・チック氏は、成功を収めたTR7 V8 ラリーカーの量産版を、英国仕様では目指していたことを認めている。今回ご登場願ったポセイドン・グリーンの1台は、そこに記されていた車両そのもので、唯一の試作車だ。

V8エンジンの最高出力は273psへ上昇

エンジンには、ローバーSD1用のカムシャフトと強化バルブスプリングが組まれ、ピストンは高圧縮比化。標準の北米仕様は8.31:1だったが、9.75:1へ高められ、最高出力はシャシーダイナモ試験で273psへ上昇していたという。

この馬力を受け止めるべく、シャシーも改良。サスペンションは、タイトなダンパーへ交換され、専用スプリングで車高は25mmダウン。リアのスタビライザーは省かれた。

BLモータースポーツ・トライアンフTR8(1980年/英国仕様プロトタイプ)
BLモータースポーツ・トライアンフTR8(1980年/英国仕様プロトタイプ)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

トレーリングリンクの再設計や強化ブッシュなどで、減速時のノーズダイブや加速時のテールスクワットは抑制。ブレーキはAP社製で、フロントには4ポッドキャリパーとベンチレーテッドディスク、専用パッドが組まれ、リアのディスクも大径化された。

アルミホイールもインチアップし、タイヤはミシュランTRXを履いた。現在は、トーヨー・プロクセスだが。フロントノーズには、TR7 V8ラリーカー譲りとなるFRP製のスポイラーを装備。風洞実験で、リフト量を3割低減することが確かめられている。

この続きは、トライアンフTR8(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

トライアンフTR8の前後関係

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