最後の『創業家アルピナ』、D3Sはワインのように熟成【日本版編集長コラム#88】

公開 : 2026.06.28 12:05

アルピナ趣味の本質とは何か

では、アルピナ趣味の本質とは何か? もちろんラヴァリナ・レザーに代表される、ブッフローエの本社ファクトリーで仕立てられた上質なインテリアも特徴ではある。しかし、味わうべきはやはりその乗り心地だ。

D3Sに乗り始めてすぐに感じたのは、それはアルピナではいつものことだが、「いいクルマに乗っている」と思わせる圧倒的な上質さだ。作りが精密で、ドイツの工業製品らしい緻密さが伝わる空間がそこにはある。

ブッフローエの本社ファクトリーで仕立てられた、上質なインテリアも特徴だ。
ブッフローエの本社ファクトリーで仕立てられた、上質なインテリアも特徴だ。    平井大介

そして、お馴染みとなる20本スポークのアルピナ・クラシックホイールと20インチのタイヤを組み合わせるそのアピアランスからは想像できないほど、足まわりはしなやかな動きだ。

減衰力は高いはずなのに不快な突き上げがなく、特に高速巡行はフラット。恐らくはボディ剛性アップも貢献しているはずで、「どうやったらこんな乗り心地が作れるのか」と、思わず感嘆の声が漏れた。

また、ツインターボを組み合わせたディーゼルエンジンはどの回転域からも加速し、そのトルクの波は快感ですらある。これぞまさに『至高のディーゼル』だ。

ドライブモードはアルピナ用に設定されている『コンフォート・プラス』以外も試してみたものの、他は必要ないと思えるほど、そのセッティングは絶妙だった。

今回はトータル1300kmほど走らせて頂いたが全く飽きることがなく、常に安心感があり、どんな遠くでもこのまま走っていけそうな気持ちになってくる。多くのオーナーが、一度所有したら中々手放さずにロングマイレージを刻むというのもよくわかる話だ。その作りはワインの如く熟成されており、『最後』に相応しい1台だと感じた。

それであれば、将来的には走行距離の少ない中古車を探すのもありだが、今そこに新車で手に入れるチャンスがあるのなら、それを逃す手はないだろう。残された時間は、あとわずかだ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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