スバル最新EV『ソルテラ』と『トレイルシーカー』の話(後編)言葉の響きよりも複雑な協業と共用【日本版編集長コラム#90】

公開 : 2026.07.12 12:05

スバルの矢島工場を取材

さて、ソルテラ、トレイルシーカーの取材を決めた後に、bZ4Xツーリングとトレイルシーカーを生産する矢島工場取材の案内が届いた。しかもトレイルシーカー返却の翌日というタイミングのよさだ。

この取材で知ったのは、両車がスバル側からの企画で実現したことだった。トヨタと開発、生産を数年かけて一緒に取り組んだことで人材が育ち、そこでのフィードバックを持ち帰ることで、開発および矢島工場での両車生産が可能となったのだ。

先日取材したスバルの矢島工場。トレイルシーカーとトヨタbZ4Xツーリングを生産している。
先日取材したスバルの矢島工場。トレイルシーカーとトヨタbZ4Xツーリングを生産している。    平井大介

今回のキモは、同じラインにガソリンモデルであるフォレスターも混流可能なこと(写真でも右端にテスト生産車が写っている)。トランプ政権がいきなり行った優遇規制撤廃によりEVへ大逆風が吹き、それを読み切れなかったホンダは歴史的損失を被った。他社も大なり小なり『被害』を受けている。そういった状況の中で、求められるのは何があっても対応できる柔軟さだ。

そこで行きついたのが、トヨタ、スバル、EV、ガソリンモデルを同じラインで生産する『究極の混流』だった。

トヨタのやり方を押しつけない

もちろん課題もあった。元町工場と矢島工場は物理的に距離があり、中京圏に集中するパーツサプライヤーを活用するには輸送コストが嵩むが、新たに調達するのはもっとコスト高になる。そこで西濃運輸と協業し倉庫を集約。トラック物流を半減させた。

工順も異なり、車両技術の違いはそのまま生産上の課題となった。同じものを作っても品質に差が出ることがあり、状況次第では、電話1本で翌日にはトヨタのスタッフが駆け付けたという。

トヨタとは工順も異なり、車両技術の違いはそのまま生産上の課題となった。
トヨタとは工順も異なり、車両技術の違いはそのまま生産上の課題となった。    平井大介

しかしそこでトヨタのやり方を押しつけるのではなく、『同じ目線』で何が最適かを考えた。その結果『変化に強い工程設計へ刷新する』ことで、柔軟に対応することに成功した。

これらの話から導き出されるのは、企業協業やプラットフォーム共用が、言葉の響きよりもずっと複雑で、簡単ではないことだ。クルマは人が作っている。当たり前ではあるが、それを改めて痛感した。

なお、この取材以来、筆者が住む静岡県東部でもbZ4Xが結構走っていることに気がついた。そして自宅に充電環境があれば、このファミリーたちがかなり有力な選択肢になることも。もし、もうひと回り小さな日産リーフ級のサイズで同じような取り組みができれば、日本でのEV普及が一気に進むのではないかと思った。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

日本版編集長コラムの連載

連載をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事