最小のクルマで、最小の国を走る フィアット・トポリーノがバチカン市国で正式採用(前編) マイクロモビリティが秘めた可能性

公開 : 2026.08.13 17:05

小型車に傾注するフィアット

トポリーノは英国では最近発売されたばかりだが、イタリアでは3年前に発売されている。このクルマは実質的に、アペロール・スプリッツ(イタリアの定番リキュール)を数杯飲み干して「ラ・ドルチェ・ヴィータ(甘い生活)」の教えを吹き込まれたイタリア版のシトロエン・アミだ。

ベースはシトロエンが開発したものだが、ステランティスの元CEOカルロス・タバレス氏は、一般的な乗用車より下位に位置する欧州の「L6」規格の小型四輪車にビジネスチャンスを見出し、フィアット版の展開を提案した。フィアットのCEOオリヴィエ・フランソワ氏はこれに同意したが、タバレス氏が想定していたような単純なブランド変更ではなく、レトロな雰囲気のボディなどデザイン上の工夫を施した。

フィアット・トポリーノ
フィアット・トポリーノ

そして、トポリーノは見事にヒットした。その反響は極めて大きく、フィアットは「小型車分野で存在感を高める」方針の一環として、マイクロモビリティへの取り組みを拡大している。そのため、トポリーノに続いて、ピアッジオ・アペを彷彿とさせる三輪商用EV『トリス』がまもなく登場する。また、よりパワフルで実用性の高い「L7」規格に準拠した4人乗り四輪車『ムルティプリナ』も登場予定だ。

マイクロモビリティは得意分野

フランソワ氏にとって、こうした取り組みはすべてフィアットの伝統に則ったものだという。

「フィアットは、『マイクロモビリティ』という言葉が生まれる前から、すでにマイクロモビリティに取り組んでいました」

フィアット・トポリーノ
フィアット・トポリーノ

フランソワ氏はこう語り、1936年の初代トポリーノ、1957年の500ムルティプラ、1972年の126を例に挙げ、これら3車種の累計販売台数は1000万台近くに達したと指摘した。

「今日、マイクロモビリティはもはやニッチな分野ではありません」

それは間違いなく事実だ。EVや電動スクーターの利用が広がり、電動モペットの人気も高まっている。しかし、かつて電動モビリティ関連のウェブサイトを編集していた筆者の経験から言えば、この分野への関心は極めて高いものの、特に自動車メーカーにとっては利益を上げるのが難しい。

BMWは電動バイクへの関心を維持しているが、他の自動車メーカーはマイクロモビリティに手を出してはすぐに撤退している。例えば、ルノーはかつてトゥイージーを販売していたが、最近マイクロモビリティ車両の開発を行っていたモビライズ部門を廃止した。ステランティス傘下のシトロエンでさえ、アミのさらなる発展にはほとんど関心を示していない。

では、なぜフィアットは他社が見出せないチャンスを見出しているのだろうか。

(翻訳者注釈:この記事は「後編」へ続きます。)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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