回顧録(1) いま知る ランチア・デルタ・インテグラーレと、その歴史

公開 : 2017.07.25 17:40  更新 : 2017.08.11 17:04

「やっぱり最悪の場所だ!」

スコットランド・ステージでいったんは首位に返り咲いたものの、ドライブシャフトを壊し、さらにタイムをロスした。

最終日の朝、アレンは、首位に立つカンクネンとミッコラを、アレンの好きなフレーズ「今こそ全力でアタックだ!」とばかりに全力で追撃していた。その時、運命の女神はアレンに微笑んだ。

カンクネンがクラッシュし、朝日に眩惑されたミッコラもそのすぐ後を追ったからだ。そんな中でアレンだけが無事だった。アレンのインテグラーレ8vは快進撃を続け、RACに優勝することで、HF 4WDでは果たせなかった夢をかなえた。


それから3年後の1991年。今回は魔の森の牙から逃れることができなかった。ランチアからスバルに移籍していたアレンは、ターボの出火により、また、若いチームメイトのコリン・マクレーは横転事故により、パンダーショウ・ステージにおいてリタイアに追い込まれた。

レガシーを横転させたスコットランド出身の「壊し屋」マクレーは、豪快なドリフト走行で知られ、それから4年後の1995年にスバル・インプレッサ555で史上最年少のドライバーズ・チャンピオンに輝くことになる。

リタイアした時、マクレーのコ・ドライバーであった同じくスコットランド出身のデレク・リンガーは、アレンに無線で話しかけ、魔の森を怖れる理由がよくわかったと伝えた。

「そうか。そうなんだよ」と答えるアレン。

「やっぱり最悪の場所だ!」

 

 

いつしか視界が開け、比較的まっすぐな道を走り続ける。どこまで行ってもキールダー・ウォーターの湖水が右舷に広がっている。

湖の東側はダムで区切られ、ジェームズ・ボンドの敵役のアジトにでもぴったりな禍々しい外見の監視塔が湖面に浮かぶようにそびえる。

開放感は長くは続かず、やはりノーサンバーランド公爵が狩りのために築いた城キールダー・カッスルに向かう道を急ぐにつれ、森が再び迫ってくる。

道はまっすぐで、車の流れも申し分ないため、距離を稼ぐことができる。エヴォ2は、低速での乗り心地がとても硬く、ごつごつと当たる感じがあり、人によっては第一印象があまり良くないかもしれない。


だが、このような道を走ると、本当に生き生きとしている。決して野山を散策するために開発されたマシンではない。あのV6ストラトスのエンジン音とは異なり、背中がゾクゾクするような魅力はないものの、パワーは十二分にある。

アイドリング時は、少し妙な感じの音がするものの、3000rpmを超えたあたりからはスムーズそのものであり、ターボが効き始め、針が急激にレッドゾーンを目指す。

エヴォ2は、いわゆるドッカンターボではなく、加速は、むしろノンターボ車のエンジン回転数がツボにはまった時の感じに近い。

一般的には、初期のターボ車ほどターボラグが大きく、その分、タービンの回転数が上がった時の加速も急な傾向にあるのだが……。ターボが効いていれば驚異的な速度で走り、一時も安定感を失わない。

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

ランチア デルタの人気画像