AMG GLC63 S「クーペ」 速いが動的性能に課題 実用性と価格にも疑問 試乗記

公開 : 2017.11.27 11:40  更新 : 2017.11.27 12:01

動きはライバルに及ばず 実用性も

このクルマの重量とフロントに収まる重いV8エンジンがあるため、GLC63 Sクーペの車両コントロールは緊張を伴うが、一旦ドライビング・モードをスポーツかスポーツ・プラスを選択すれば、その動きは収束をみせる。そして、コンフォートにモードを戻しても、コーナーリング中の僅かな挙動の振れを示すに過ぎない。

これら全ては、乗り心地の犠牲の上に成り立っているわけではないというのもポイントだ。

エア・スプリングは、路面の荒れを上手くいなす立派な仕事をしているし、フラットでロールを抑制した姿勢を保っている。4輪駆動システムが路面をグリップするレベルは、期待通りに素晴らしいものである。

ただし、このクルマの絶大な能力は、純粋にドライバーの能力が映し出されているわけではない。可変ステアリングは正確だが、太くて柔らかいステアリング・ホイールは、マカン・ターボの様に、路面との対話を伝えてくれるものではない。

そこには、同じ水準の連続的な相互作用があるわけではない。このメルセデスは、各コーナーでドライバーと常にコミュニケーションを取っているわけではなく、強引にいうことをきかせている様である。

加えて、ドイツの整備の行き届いた道では、素晴らしいパフォーマンスを披露するこのクルマであるが、同じことが路面の悪いイギリスの公道では言えないかもしれない。

そのうえ(多くのGLC63クーペの購買層は、実用性をその主な購入動機として捉えていないだろうが)今日のマーケットで、これほど後方視界が悪い同サイズのクルマを見たことがない。

ワイドなトレッド、膨らんだボディ・スタイル、大径のホイール(テスト車はオプションの21インチ・アルミ・ホイールが装着されていた)を考慮すると、街中で、このGLC63クーペは、恐ろしいほどに扱いにくい。

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