スバルWRXファイナル・エディションに試乗 歴史や今後に思い馳せる

公開 : 2018.03.04 10:10  更新 : 2018.03.04 10:25

「愚かにもそれを見過ごしてきた」

WRX以外にこのコンディションで運転しようと思うクルマはそれほど多くはない。雪が降れば、どんな風に四輪がグリップとトラクションを確保し、それをどれほど頼もしく感じるかが身に染みて理解できる。このクルマであれば、雪や氷のコンディションでも恐怖を感じることなく、躊躇なく前へと進んでいける。

それでもスタックしてしまう。WRXは245/35サイズのアドバン・スポーツラバーを履いており、ときおり3速でエンジンをふかしても、カメラマンがリアウイングに体重をかけてクルマを地面に押し付けない限り、1534kgのボディを前に進めるにはトラクションが不足する時があるのだ。

この道は諦めて、もう少し条件の良い道を探すことにした。そこもこんな時期には本物のSUV以外には1台もクルマがいない、もちろんハイパフォーマンスカーなど走っていない場所である。もし前へと進みながら、同時に運転も楽しもうと思えば、夢中になり過ぎて、燃料が残り少ないことに驚くハメになる。もちろんこんな運転は時代遅れであり、直ぐに前は見えなくなって、疲れ切ってしまうが、一方で懐かしくもあるのだ。

このWRXには特別な何かがあり、三菱エボが姿を消したいま、このスバルのようなクルマはこれで本当に最後だろう。フォード・フォーカスRSが近い存在かも知れないが、全く同じではない。このクルマをインプレッサ最良の日の残り香だというひともいるが、依然としてこのクルマは全てのFFホットハッチやコンパクト・スポーツセダン、さらにはほとんどの四輪駆動モデルよりも優れたドライバーズカーである。

このクルマには素晴らしい能力と驚くべきフィードバック性能が備わっている。他のモデルを打ち負かして頂点に立つためや、ロンドンで名声を得るためでなく、排ガス規制を生き延びるために設計されたのでもない。

このクルマは少数のひとびとが厳しいコンディションや道路を生き抜くために作られたのだ。このクルマとともに、ラリーカー・レプリカの市場が無くなることで、本当に困ることになるだろう。

われわれは愚かにもそれを見過ごしてきた。おそらく十分に認識出来ていなかったのだ。いまでは後悔しながら、その退場を見送ることしかできない。

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