ロードテスト プジョー508 ★★★★★★★★☆☆

公開 : 2018.12.08 10:10

 

意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 走り ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

走り ★★★★★★★☆☆☆

508のセンターコンソールに配されたセレクタースイッチで、スポーツモードを呼び出し、クルマの性格を変えてみる。変化量は大きくはないものの、スロットルレスポンスは向上し、ステアリングの重みも増す。

カーステレオから聞こえてくる、人工的に増幅されたエンジン音は、実態に欠けるもの。エンジンそのものからの音も直接聞こえてくるから、不自然さがある。聞いていて心地よいものなら、サウンドの変化は歓迎だ。しかし、いかにもディーゼル的なブルーHDiが搭載するエンジン音のボリュームが大きくなるのは、特に歓迎できるものではない。しかも、本物のエンジン音よりも大きな音で、人工的なエンジン音を鳴らすというアイデアは、失敗なのではないだろうか。

4速でレッドゾーンまでエンジンを回した時の車内の音量は、74dBだった。以前うるさいと指摘したボルボV60 D4のエンジンノイズは、73dBで、実はそれよりも騒がしい。それでも、直線加速性能は、このクラスとしては許容できる範囲に留まる。われわれが計測した0-96km/hに要する時間は8.8秒。派手に路面を蹴りながら進んだものの、プジョーのカタログ値、0-100km/hの8.3秒には届いていない。

2015年にテストした、189psを発生するアウディA4 TDIの記録は8.4秒。2012年のBMW 320dは、7.6秒となっている。最大トルクではアウディが40.7kg-m、BMWが38.64kg-mと近似しているが、現実世界で用いる機会が多い48km/hから112km/hへの加速時間では、さらに差が生じる。A4は7.2秒、320dは7.4秒でこなした一方で、508HDiが要した時間は8.5秒と、見逃せない時間差となる。エンジンの柔軟性が問われる、48km/h〜112km/h加速を4速固定でこなした場合、508HDiは9.7秒だったが、A4はより速い8.2秒、320dは遅い10.8秒となっている。

加速自体は全体的にスムーズだったが、4000rpmを越えた辺りでエンジンは息が苦しくなる素振りを見せる。テスターのひとりは、8速ATの変速が、この息継ぎする回転数を越えた辺りで行われる傾向を指摘している。このことも、0-100km/h加速でメーカー公称値に及ばなかった理由のひとつだろう。

ただし、一般道ではトランスミッションの変速は全般的にスムーズで気になる部分もない。唯一、ミルブックのテストコースを低速で走行中、急に路面の傾斜が変化する箇所で、シフトアップで戸惑う場面があった。反面サーキットでは、スムーズで滑らかな走りを見せている。

テストコース

ミルブルック自動車性能試験場の丘陵コースの一部が、舗装工事中だったため、508の実力を完全に試すことは叶わなかった。通常の走行スピードなら、ATは全般的にスムーズで適切なシフトチョイスをしてくれる。しかし、変化に富む急勾配が続く区間では、8速ATの優柔不断な側面が露わになる。

この丘陵コースのようなワインディングを攻めて走るペースには、トランスミッションが着いていけない様子。加速しながらコーナリングする際や、急勾配を一気に駆け上がる場合などでは、シフトチェンジがまどろっこしく、思い通りのペースで走らせることができなかった。

マニュアルモードを選択すれば、ATのレシオも支配下におけるものの、そのためにはドライブモードをスポーツにしておく必要がある。そうすると、自ずとサスペンションが締まり、ステアリングホイールの重みも増してしまうのが悩ましい。

T1セクションの勾配が変化しながらのコーナーでは、ステアリングホイールにタイヤからのキックバックが伝わってきた。T2セクションのヘアピンカーブでは、アンダーステアが顔を出すが、スロットルを戻すことで、充分修正は可能。T5の高速コーナーではスタビリティコントロールが介入してくる。ATもギクシャクしがちで、次のセクションまでその傾向が続いてしまった。

発進加速

プジョー508 ブルーHDi 180S&S GT
テストトラック条件:乾燥/気温17℃
0-402m発進加速:16.7秒(到達速度:137.4km/h)
0-1000m発進加速:30.1秒(到達速度:180.5km/h)
48km/h-112km/h加速/4速:9.5秒

フォルクスワーゲンパサート2.0 TDI 190 DSG(2015)
テストトラック条件:湿潤/気温3℃
0-402m発進加速:16.8秒(到達速度:138.2km/h)
0-1000m発進加速:30.3秒(到達速度:177.0km/h)
48km/h-112km/h加速/4速:12.4秒

制動距離

プジョー508 ブルーHDi 180S&S GT
テスト条件:乾燥/気温17℃
97-0km/h制動時間:2.62秒

フォルクスワーゲン・パサート2.0 TDI 190 DSG(2015)
テスト条件:湿潤/気温3℃

 

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