なぜ新型カローラは3ナンバーに? 苦渋の選択、売れ行き影響は? トヨタの対応策

公開 : 2019.09.17 13:05  更新 : 2021.10.22 10:17

ナンバーサイズの弊害 独自ボディで対策

TNGAのプラットフォームを使えば、走行安定性、乗り心地、静粛性などをバランス良く向上できるが、全幅を1700mm以下の5ナンバーサイズに収めることは不可能だ。

3ナンバー車になれば、国内市場では売れ行きが心配される。だからといって5ナンバーサイズのプラットフォームを使えば、先に述べた通り走行安定性や乗り心地に不満が生じてしまう。

TNGAのプラットフォームを使って、ボディをコンパクトに抑えるという対応策にでた。
TNGAのプラットフォームを使って、ボディをコンパクトに抑えるという対応策にでた。    上野和秀

開発者は一長一短の難しい選択を迫られた。

そこで生み出された開発手法が、TNGAのプラットフォームを使って走行安定性と乗り心地を向上させながら、ボディをなるべくコンパクトに抑えるものだった。

全幅がワイド化されて3ナンバー車になるのは避けられないが、取りまわし性の悪化は最小限度になる。

そのために国内仕様の新型カローラは、独自のボディを開発した。海外仕様のカローラセダンとワゴンのツーリングスポーツは、全幅が1780−1790mmでホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2700mmだ。

そこを日本仕様のセダンとツーリングは、5ドアハッチバックのカローラスポーツをベースに開発した。

したがってホイールベースは2640mmに収まり、2700mmの海外仕様よりも小回りが利く(その代わり後席の足元空間は狭まる)。

最小回転半径は15インチタイヤ装着車が5.0m、16/17インチでも5.3mだ。

さらに基本骨格には手を付けず、フェンダーやドアパネルの変更で、全幅を1745mmに抑えた。

国内で売られるカローラスポーツの全幅は1790mmだから、日本仕様のセダンとツーリングは特別に幅の狭いボディを与えられた。

この経緯を開発者は次のように説明する。

「TNGAのプラットフォームを使うと、全幅を5ナンバーサイズに収めることはできません。だからといって海外仕様と同じサイズでは、5ナンバー車の従来型から乗り替えるお客様が、使いにくくなる心配があるのです」

「そこでボディの外板だけを変更して、全幅を1745mmに抑えました。この数値は先代(3代目の)プリウスと同じ。先代プリウスは絶好調に売れて、日本の道路環境にも適応しています」

「お客様の年齢層も幅広いです。1745mmの全幅であれば、3ナンバー車になっても許容されると判断しました」

このように新型カローラのセダンとツーリングは、ホイールベースの短いカローラスポーツをベースに、全幅をさらに45mm狭めて開発された。

3ナンバーサイズに拡大したことで生じる弊害をなるべく小さく抑えようと工夫を凝らした。

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。
  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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