なぜ新型カローラは3ナンバーに? 苦渋の選択、売れ行き影響は? トヨタの対応策

公開 : 2019.09.17 13:05  更新 : 2021.10.22 10:17

世代によって受け止め方が異なる3ナンバー

カローラを3ナンバー車にした理由。

それは「5ナンバーサイズに収まるプラットフォームで開発すると、新しいセダン&ワゴンに相応しい走行安定性と乗り心地が得られない」というものだ。

新型カローラのサスペンション。
新型カローラのサスペンション。

ここで述べている5ナンバーサイズのプラットフォームとは、ヴィッツなどのコンパクトカーに使われるものだ。

仮にトヨタがコンパクトカーよりも上級の5ナンバー車に適するプラットフォームを別途開発したら、国内向けの新型カローラは、走行安定性と乗り心地を向上させながら5ナンバーサイズを守れたかも知れない。

かつて日本のメーカーは、5ナンバーサイズに収まる複数のプラットフォームをそろえ、車両重量や価格に応じて使い分けていた。

トヨタは車種数の多いメーカーだから、2種類の5ナンバープラットフォームを用意する方法もあっただろう。

今のトヨタはダイハツを完全子会社にして、スバル/マツダ/スズキとも提携を結ぶ。この関係を活用すれば、メーカーの垣根を超えて、上質な5ナンバー車のベースを開発できるように思う。

そうならないのは、環境性能の向上や自動運転技術の開発もあって車両開発に費やせる予算が減り、なおかつ国内市場の優先順位も下がっているからだ。国内市場への愛情がもっと深ければ、新型カローラは違うクルマになっていたかも知れない。

その一方で、セダンの位置付けが以前と変わっていることも事実だ。1980年代までは、セダンが実用的なクルマの基本形とされたが、今は抜本的に室内空間を広げたミニバンがある。

背の高いコンパクトカーや軽自動車も、優れた実用性を備えて好調に売れている。今ではセダンはクルマの基本形から、個性派に変わったのだ。

そうなるとセダンには、背の高いミニバン/コンパクトカー/軽自動車とは違う、個性派としての独自の価値が求められる。

それは上質な走りだ。セダンは背が低いから重心が下がり、後席とトランクスペースの間には隔壁があるからボディ剛性を高めやすい。タイヤが転がる時に発するノイズを遮断する上でも有利だ。

つまり「ミニバン時代のセダンの価値」は、優れた走行安定性/乗り心地/静粛性にあり、いい換えれば「安心と快適」になる。

カローラのセダンとツーリングも、この魅力に焦点を絞るとすれば、たとえ3ナンバー車になっても走りの質を高めた方がユーザーから歓迎されるかも知れない。

今は世代によってもセダンのとらえ方が違う。高齢のユーザーから見れば使い慣れた実用的なツール。いっぽうで幼い時から自宅にミニバンがあった30歳以下のユーザーにとっては、個性的なカテゴリーになる。

セダンを取り巻く環境が過渡期にあり、ユーザーによってセダンの価値観も違う。そこまで含めて、セダンを満喫したい。

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。
  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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