フォード・カプリ3.0S 英国ツーリングカーの英雄、ゴードン・スパイスとの再会 前編

公開 : 2019.09.28 07:50  更新 : 2020.12.08 10:56

リスクを計算しながら、安全を確認しながら、一生懸命運転するだけ、と話すのは、英国スポーツカーとツーリングカーのヒーロー、ゴードン・スパイス。彼をクラス優勝へと導いたフォード・カプリと、シルバーストーン・サーキットで再会しました。

もくじ

40年ぶりにドライブするかつての相棒
16歳のときからフォード・カプリのファン
MG TFからスタートしたスパイスのキャリア
ストックカーのようなサイド・バイ・サイド

40年ぶりにドライブするかつての相棒

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

スポーツカーとツーリングカー・レースで活躍したレーシングドライバー、ゴードン・スパイスは笑顔で溢れていた。「難しかったことは、思い出たっぷりのクルマから降りることくらいでした」 彼のいうクルマとは、1978年のBSCC(ブリティッシュ・サルーンカー・チャンピオンシップ)でクラス優勝を果たしたフォード・カプリ3.0S。今回の取材で、約40年ぶりに運転したという。

「膝の調子が悪いんです。わたしが現役だった頃は、ロールケージのサイドバーや安全装置などは付いていませんでしたからね」 華やかな時代を過ごした彼は79歳になった。いまでは控えめな雰囲気だが、瞳の中には輝きを失っていない。そしてフォード・カプリが、いまでも根強い人気を持っていることに驚いている様子。

フォード・カプリ3.0Sとゴードン・スパイス
フォード・カプリ3.0Sとゴードン・スパイス

「アイコンのような存在になるとは、当時は思いもしませんでした」 と彼はいう。レーシングドライバーとしてのキャリアのステップでしかなかったとしても、今振り返ると1978年はツーリングカーの英雄としての地位を築いた重要な年だといえる。

カプリ3.0Sとスパイスとの再会は特別なものだった。今回は、彼がツーリングカーの主役へと上り詰めた、その経緯を振り返ってみたいと思う。

取材したのは、2019年のシルバーストーン・クラシックに向けて、誕生から50周年を迎えるモデルを祝うイベント。そのヒストリック・ツーリングカー・チャレンジ・レースで優勝したカプリには、その日限りのゴードン・スパイス・トロフィという特別な賞が与えられた。

16歳のときからフォード・カプリのファン

ゴードン・スパイス・トロフィを獲得したのはマイク・ウィタカーというレーシングドライバーで、スパイスの大ファンでもある。そして、1978年フォード・カプリ3.0Sの現在のオーナー。ウィタカーは若い頃から、フォード・カプリに心が奪われ続けてきた。

「このクルマを初めて目にしたのは、友人の兄が所有する3.0Lのカプリで会場へ向かったオールトン・パークでのイベント。16歳の時です。このクルマはオークションで落札したのですが、かなりの金額を払いました。スパイスのクルマだったので、値段が跳ね上がったのです。他のドライバーのクルマなら、そこまで払わずに済んだと思います」

フォード・カプリ3.0S
フォード・カプリ3.0S

1970年後半、カプリとスパイスとの圧倒的な強さが、若いクルマ好きを魅了した。セクシーなボディラインを持つフォード・カプリは、サーキットに光を灯した。1975年から1982年にかけてのブリティッシュ・サルーンカー・チャンピオンシップ(BSCC)で、通算26勝を挙げ、6シーズン連続でクラス優勝を成し遂げている。カプリにチョークで、「次のレースが面倒だ」とスパイスが書き記した逸話もあるほど。

「スパイスはツーリングカーにおける、1Fドライバーのジェームズ・ハントのような存在でした。土曜日にパーティをして、日曜日のレースでは優勝です」 とウィタカーは熱く話す。

当時のスパイスはレースのほかに、カーアクセサリーの販売というビジネスも手掛けていた。「レース参戦には罪悪感もありました。財務集計表を見る度に、本来はオフィスで仕事をしているべきだと感じていたからです。ビジネスの成功も重要な目標でしたから。一方で、レースの戦績はビジネス全体の収益にも影響を与えており、サーキットにいることを正当化する理由でもありました。言い訳みたいなものです」 と振り返るスパイス。

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