日本車のTVコマーシャル、外国人が海外で運転するシーン 理由は? 多様化で表現にも幅

公開 : 2019.11.04 06:00  更新 : 2021.10.22 10:17

日本車のCMなのに、外国人が海外で運転しているシーンが増えました。その理由を自動車メーカーに訪ねました。いっぽうで起用された人がクルマの特徴をイメージさせるものも。それぞれに意図があります。

日本車のCMなのに外国人が海外で運転

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)

クルマのCMを見ると、日本車なのに外国人が運転していたり、海外で撮影されている映像も多い。

日本国内で売るクルマなら、日本人が日本の街中で運転しているのが自然だと思うが、実際はそうなっていない。

マツダCX-30。メーカーが公式に配布する画像にも、海外の風景と外国人。
マツダCX-30。メーカーが公式に配布する画像にも、海外の風景と外国人。

最近発売されたクルマでも、トヨタカローラ・セダン&ツーリングやマツダCX-30のCMが、日本を意識させない造りになっている。

CMによっては右ハンドルの日本車が、右側通行の道路を外国人のドライブで走る映像もあり、何となく無国籍的だ。

輸入車のCMには、外国人が左ハンドル車を右側通行の道路で運転していることも多い。これはいかにも輸入車としてわかりやすいが、日本車の場合は、そこまで徹底されていない。

走っている車線が右側なのか左側なのか、判別しにくい映像もある。

なぜ日本車のCMに外国人を起用したり、海外で撮影しているように見せる必要があるのか。

日本車のCMに外国の人達を使う理由

日本車のCMに、外国の人達を使ったりする理由をトヨタに尋ねると、以下のような返答であった。

「有名なタレント等を起用すると、その人物に対する興味の方が大きくなり、クルマに対する注目度が低くなる場合があります。そこでカローラでは、あえてタレントを起用しませんでした」

CFに外国人を起用したトヨタ・カローラ。
CFに外国人を起用したトヨタ・カローラ。

「今回、カローラのCFに外国人を起用した背景には、カローラがグローバルで統一されたことを印象付けたい意味合いもあります。またいろいろなシーンでの使われ方を表現したいこともありました」

ほかのメーカーにも尋ねたが、外国人を起用する理由は、おおむね同様であった。

確かにCMに有名な俳優とかスポーツ選手を起用すると、その人物に視線が集まり「誰が出ていたかは憶えているが、何のCMだったか忘れた」ということがしばしば起こり得る。

昔話になってしまうが、1980年代に2代目三菱ミラージュが、TVのCMにエリマキトカゲの映像を使ったことがあった。爬虫類が後ろ足だけで立ち上がり、疾走する映像だ。

このユニークなCMを切っ掛けに、多くの人達がエリマキトカゲを知ることになったが、ミラージュの宣伝効果はサッパリだった。

クルマに限らず、CMの表現方法によっては、映像が注目されても商品の訴求効果は高まらず逆効果になってしまう。

その点で名前の知られていない外国人を使うと、顔立ちの個性が注目されにくい。日本人では、顔に目が向いて商品のイメージも左右されるが、外国人では過度な注目を集めず商品の印象が残る。

カローラではグローバルカーであることを訴求することも考えて、外国人を起用したが、人物の個性を抑えるために外国人で表現することも多い。

その一方で、CMに起用する人物で、商品のコンセプトや特徴を表現する場合もある。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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