【新パワートレイン試乗】M・ベンツEクラス、ディーゼルPHV「E 350 de」 価格/内装/走りを評価

公開 : 2020.01.01 20:55  更新 : 2021.12.28 00:10

どんな感じ?

ディーゼル×PHVで先進感ばりばりの先鋭的エコモデルというオチにならないのがベンツ車らしい。

「E 350 de」はあくまでもEクラスの上級モデル。もう少し言えば、これまでAMG要素とパワースペックに引っ張られていたベンツ的プレミアム性とは別志向の新たなプレミアム性をPHVが付与。コンフォートというか大人っぽいプレミアム感である。

12.3インチのディスプレイには、計器情報のほか、システムの作動状況がカラーで表示。
12.3インチのディスプレイには、計器情報のほか、システムの作動状況がカラーで表示。

試乗した時に第一に感じたのは静かさ。電動走行だから静かなのではない。エンジンを稼働し続けて走行し、バッテリー充電を行う「チャージ」モードで走らせていてもエンジン音は静かである。

ただし、感心させられたのはエンジン音の静かさではない。

エンジン騒音もその要素の1つだが、どのような走行状態でも騒音の質感が変わらないのが最も印象的だった。

乗り心地 FR系ベンツでも特筆

電動/内燃機/電動パワーアシストなどパワートレインの稼働状態は状況によって異なる。それに応じてパワートレインまわりの騒音は音量・音質ともに変化するのだが、「E 350 de」はその変化が少ない。

さらに言えば、パワートレインまわりが無音に近くなるほど目立つロードノイズにしても然り。路面舗装状態による音量・音質の変化が抑えられている。

低振動、低騒音でメルセデス・ベンツの名に相応しい快適性を実現している。
低振動、低騒音でメルセデス・ベンツの名に相応しい快適性を実現している。

ロードノイズは変化が大きいほど薄っぺらな印象を与えるため、電動走行時の走りの質感向上の要点の1つ。外部騒音の遮断も同様。結果、電動から加速まで定量的な静けさを維持できる。

静かさを強調すると、いつでも無音走行と誤解されそうだが、アクセル操作や走行速度を感じるために必要な音は聞き取れるし、エンジン稼働をタコメーターで確認する必要もない程度はある。音楽を聴いたり、会話が盛り上がるとそれも消えてしまうのだが……。

乗り心地は重質。FR系ベンツ車すべてに共通するが、その中でも重質。

重さを感じさせるゆったりとしたストローク感。しっとりとした沈み込みと据わりのよさ。ストローク量も程よく抑制されている。エアサスに比べると低中速域では腰の強さが先行した感じだが、コイルサス仕様では最もどっしりとした乗り味を示す。

全開加速は?

運動性能は、部分的な電動アシストを活かしたアクセル反応の素直さや、巡航ギア維持能力が特徴。全開時の高回転域の加速の伸びもよく、ディーゼル車とは違った加速の心地よさも味わえる。

電動からエンジン稼働走行への移行はスムーズであり、電動走行上限をペダルフィールに“ノッチ感”を与えてそれとなくドライバーに示すのも好感。

全開加速では、ディーゼル車とは異なる高回転の伸びも味わえる。
全開加速では、ディーゼル車とは異なる高回転の伸びも味わえる。

ただ、PHVとしては電動優先の「E」モードでも電動でカバーできる領域は限られ、登坂加速などで負荷が大きい状況ではエンジン稼働の頻度も高まる。「E」モードと「ハイブリッド」モードの差異はエンジン稼働のタイミングの違い。「E」モードはタウンユースや郊外路走行に合わせた電動優先制御とも言える。

穏やかで神経質な操舵を必要としない操縦性。サイズや重量をあまり感じさせない取り回し感覚。機能面だけでなく、渋滞路などで助けて欲しいところで使える運転支援機能と現実的な視点の安全装備。

最高水準の安全&運転支援機能など、Eクラスに共通する魅力はそのまま、もしくは上乗せ。エコのアドバルーンではなく実践力の高さが一番の魅力だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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