【家族との再会】初代メルセデス・ベンツAクラス(W168型) ふたたびの邂逅 前編

公開 : 2020.03.18 11:50  更新 : 2020.03.18 15:43

Aクラスの偉大さ

当時、長期テスト車として担当していたのはジャガーXJRだった。

もはやその理由すら思い出すことは出来ないが、Aクラスがやってくるその直前まで、このクルマにはウェールズで週末を過ごすのに必要なすべてを積み込んでいた。

家族との再会 W168型Aクラス
家族との再会 W168型Aクラス

そして、XJの半分でも荷物を積み込むことができれば十分だと思っていたのだが、実際には十分なスペースを残したまま、このAクラスはすべてを飲み込んで見せただけでなく、リアにはジャガーを凌ぐレッグルームまで確保していた。

3.5mをやや上回る程度のA140に対して、XJの全長は約5mにも達していたにもかかわらずだ。

だが、それだけではなかった。

A140のリアシートは単に折りたためるだけでなく、左右独立して前後にスライドするとともに、リクライニングも可能であり、さらには取り外すことも出来た。

フロント助手席まで取り外せば、Aクラスをシングルシーターへと変身させることも可能だった。

フォルクスワーゲン・アップよりもわずかに長い全長しか持たないこのクルマは、望めば小さなバンのように使うことも出来た。

確かにこのクルマのステアリングを握ってみても、ケータハム・セブンはもとより、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIほどのダイナミクス性能も備えていないことは明らかだったが、だからと言ってAクラスの偉大さは何も変わらない。

過去20年でもっとも革新的なモデル

これまでに登場した偉大なモデルをリストアップしてみれば、そのどこかにシトロエンDSが登場することになるはずだが、それはこのクルマのダイナミクス性能が理由ではない。

このクルマは運転しても扱い辛く、遅く、そしてつまらなかった。

家族との再会 W168型Aクラス
家族との再会 W168型Aクラス

だが、DSは革新的で美しいモデルであり、それだけで十分だった。

確かに、Aクラスのことをもっとも美しいなどとは言えないが、革新的であることに疑いの余地はなく、過去20年間に登場したどのモデルも、革新という点ではこのクルマに近づくことすらできないだろう。

実際、過去60年まで遡ってみても、このクルマに匹敵するのは初代ミニだけだ。

だが、ミニとは違い、Aクラスが40年以上に渡り作り続けられるということはなかった。

まったく異なるふたつのモデル(ベンツに詳しいひとであればW168とW169だと教えてくれるだろう)によって、15年間のモデルライフを全うすることには成功したものの、組立品質ではW168を凌駕していたW169だったが、設計の見事さという点では比べるべくもなかった。

W168ではふたつのホイールベースが選択可能だった一方で(ロングホイールベース版であれば、フォードフィエスタよりも短い全長で、ベントレーアルナージを凌ぐ後席レッグルームを確保していた)、W169で設定されていたホイールベースは1種類だけだった。

さらに、W169の後席は他のハッチバック同様、単に折りたためるだけであり、間違いなく製造コストは下がっていただろうが、それ以外は完全に退化していた。

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