【驚きの額で落札】軍用車キューベル・ワーゲン、水陸両用シュビム・ワーゲン 北米オークション

公開 : 2020.03.12 05:50  更新 : 2021.10.11 09:29

WWIIにドイツ軍が発注した軍用車「キューベル・ワーゲン」「シュビム・ワーゲン」。ボナムスのオークションに姿を現しました。今では貴重な存在だけに高額落札に。

ドイツ軍が送り出した軽軍用車

text&photo:Kazuhide Ueno(上野和秀)
photo:BONHAMS

第二次世界大戦用に作られた軽軍用自動車といえばアメリカ軍のジープが代表格といえるが、ドイツはオリジナリティあふれるモデルを創り上げた。それはフォルクスワーゲンkdfのコンポーネンツを利用した2つのワーゲンだった。

1つはポルシェ設計事務所のフェルディナンド・ポルシェ博士が設計し、旧ドイツ陸軍の軽軍用車として生産されたフォルクスワーゲン・キューベル・ワーゲンTYP82型。

1944年製のフォルクスワーゲン・キューベル・ワーゲンTYP82型
1944年製のフォルクスワーゲン・キューベル・ワーゲンTYP82型

俗に「キューベル・ワーゲン」と呼ばれ、過酷な戦地での使用を考慮してシンプルな構造で作られ、リアにおなじみの空冷水平対向4気筒エンジンを搭載する。

今回ボナムス・アメリアアイランド・オークション出品されたのは1944年製のフォルクスワーゲン・キューベル・ワーゲンTYP82型。

完璧なレストアが施されドキュメントが揃うという素晴らしいコンディションを保つ1台だ。

予想額超えの入札

同オークションにはゲルハルト・シュニューラー・コレクションから数多くの車両が出品されたが、このキューベル・ワーゲンもその1台である。

まさに歴史の生き証人といえる貴重な存在なのだが、マーケット的に見るとインターメカニカ社から精巧なレプリカが販売されていることから、こだわりの軍用車マニアでないと手を出さなくなっていたのである。

1944年製のフォルクスワーゲン・キューベル・ワーゲンTYP82型
1944年製のフォルクスワーゲン・キューベル・ワーゲンTYP82型

事前の予想落札価格はレプリカと変わらぬ321〜428万円と謳われていたが、コンディションの良い本物だけに熱烈なファンが競り合った。

オークションを終えてみれば、予想を大きく上まわる5万8240ドル(624万円)で終えた。

シュビム・ワーゲン 驚きの額で

もう1台のワーゲンは、キューベル・ワーゲンの姉妹モデルといえるフォルクスワーゲンTYP166シュビム・ワーゲン。

こちらもフォルクスワーゲンkdfのパワーユニットを使用する軽軍用車なのだが、いわゆる水陸両用車なのである。

フォルクスワーゲンTYP166シュビム・ワーゲン
フォルクスワーゲンTYP166シュビム・ワーゲン

ドイツ軍の軍用車ファンにとっては極め付きといえる1台なだけに大きな注目を集めていた。

ボディ下部はボートのような形状でリアにはエンジン後端から動力を導く推進用のスクリューが備わる。

このスクリューユニットは、陸上を走行する時は上に跳ね上げられる構造になっている。

1558万円で落札

そしてシュビム・ワーゲンのもう1つの特徴が、上陸する時の岸はぬかるんでいることが多いため、トラクションを確保するために4輪駆動が採用されているのが特徴だ。

このシュビム・ワーゲンはキューベル・ワーゲンと同様にゲルハルト・シュニューラー・コレクションからの放出車で、2006年に時代考証も含め完璧なレストレーションが行われ、素晴らしいコンディションに保たれている。

フォルクスワーゲンTYP166シュビム・ワーゲン
フォルクスワーゲンTYP166シュビム・ワーゲン

シュビム・ワーゲンはレプリカが存在せず、かつメカニム的にも革新的で貴重な存在だったことからコレクターが競い合った結果、予想落札価格を大きく超える14万5600ドル(1558万円)で落札された。

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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