【父のレーシングカーと再会】シムカ1000ラリー2 息子が手掛けた修復 後編

公開 : 2020.06.20 16:50  更新 : 2020.12.08 11:04

オリジナルに拘ったレストア

「エンジンは、専門家の手に委ねたいと思い、リスボンのトビアス・マーティンスへ送りました。すべてイチから作り直すことに決め、ボディの塗装もすべてを剥がしました」

「手作業で、4層を剥離してあります。(研磨剤を吹き付けて剥がす)サンドブラストなどで、ボディにダメージを与えたくなかったのです」

シムカ1000ラリー2(1973年−1978年)
シムカ1000ラリー2(1973年−1978年)

「とても長い時間を要する作業でしたが、その価値はあったと思います。塗装を剥がしていくと、ボディシェル自体はとても良好な状態でした。そこからジグソーパズルのように組み立てました。いくつかの部品が足りませんでしたが」

「レストアを進める中で、1975年に父がヴィーラ・ド・コンデのレースでクラス優勝をした時のスペックへ、復元することに決めたんです」 ラセルダが説明する。

「友人のティアゴ・ラポソ・デ・マガリャエスが、近い状態のクルマを所有していて、借りることができたのも幸運でした。良い参考になりましたから。最も難しかったのは、正しいギアボックスを見つけることでした」

「ボディトリムは、オークションサイトやフランスの専門ショップなどから取り寄せました。できる限りオリジナルにこだわっています。この消火器も、1975年当時に付いていたものと同じ仕様です」

「他に時間を要したのは、当時と同じステッカーを複製すること。1年ほどを掛けて部品を組み合わせ、ボディを完成させました」

カラムロの町とともにあるシムカ

再塗装を終えると、さらに1年を投じてシムカ全体のリビルトが進められた。基本的にはオリジナルに戻す作業だったが、エンジンには少しだけチューニングも加えられている。

オリジナルのソレックス・キャブレターの代わりに、ツイン・ウェーバーが載せられた。カムも高性能なものに変えてある。「1500rpmほどレブリミットが高くなり、パワーも少し増しています」

シムカ1000ラリー2(1973年−1978年)
シムカ1000ラリー2(1973年−1978年)

レストアが完成したシムカは、2011年のカラムロ・モーターフェスティバルでお披露目された。1985年のラリー以来の、久しぶりとなるモータースポーツ・イベントとなった。

「すべての作業が完了したのは、イベントの1週間前。テスト走行はほとんどできませんでした。ディストリビューターの調整など、小さなトラブルはありましたが、大きな不具合はなし。ヒルクライムコースでシムカを走らせるのは、特別な瞬間でしたね」

ラセルダが回想する。彼は他にも数台の興味深いクルマを所有している。だが、シムカが一番のお気に入りだという。

「とても特別なクルマです。わたしと父をつないでくれる存在です。レストアに投じた努力も、相当なものでした。妻のセシリアもモータースポーツへの情熱に溢れる人で、シムカを気に入ってくれています」

「単にわたしだけのクルマ、というわけではありません。このシムカは、カラムロの街にあるべきです。もう二度と、決して売ることはないでしょう」

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