【画期的だったオープン・スポーツ】ロータス・エリーゼS1 英国版クラシック・ガイド

公開 : 2020.07.18 08:50  更新 : 2020.12.08 11:04

新しいロータスの幕開けとして、人気を獲得したロータス・エリーゼ。登場から25年が過ぎますが、優れたネオ・クラシックとして魅力は色褪せません。運転の喜びにあふれたクルマとの付き合い方を、英国編集部が解説します。

安価で軽量なロータス史上最高のスポーツカー

text:Malcom McKay(マルコム・マッケイ)
photo:James Mann (ジェームズ・マン)
translation:KENJI Nakajima(中嶋健治)

 
1995年のフランクフルト・モーターショーで発表されたロータス・エリーゼ。1973年にシリーズ4へと進化したセブンの製造を終えて以来、ロータスとしては久々の手頃なスポーツカーが誕生した瞬間だった。

英国での価格は、ロータス・エランS2の半額。エスプリ1台の予算で、3台のエリーゼが手に入った。ロータス史上、最高のスポーツカーといっても過言ではない。

ロータス・エリーゼS1(1996年〜2001年/英国仕様)
ロータス・エリーゼS1(1996年〜2001年/英国仕様)

ボディのスタイリングはジュリアン・トムソンが、技術面の設計はリチャード・ラッカムが手掛けた。エリーゼという名前は、当時のロータスとブガッティの会長、ロマーノ・アルティオリの娘にちなんだものだ。

アルティオリは発表時、「オリジナルのエリート以来、ロータスとしては最も大胆な技術を搭載したロードカーです」 と、AUTOCARの取材に答えた。それは事実だった。

シャシーはアルマイト加工されたアルミニウム製で、エポキシ接着剤で接合。両端に横長のトルクボックスを備えた、彫りの深いシンプルなタブ型が特徴だ。スチール製サルーン・ボディと同等の剛性を確保していた。

シャシー本体は、ロールバーを除いて68kgと軽量。車重は750kgを切り、不必要に強力なエンジンなしで、驚異的な走行性能を実現した。スチールが用いられたのは、ロールバーと亜鉛メッキ処理のリアサブフレーム、サスペンション・マウントに限られる。

セブンと互角に得られるドライバーの喜び

販売面でも大成功。AUTOCARでもエリーゼの完成度には感銘を受け、3週連続で特集を組んだほど。ケーターハム・セブンと互角のドライビング体験を、高く評価した。

秀逸のフィーリングとレスポンス。繊細なコーナリング能力と、セブンでは得られない快適な乗り心地。エリーゼは見事なバランスを獲得していた。

ロータス・エリーゼS1(1996年〜2001年/英国仕様)
ロータス・エリーゼS1(1996年〜2001年/英国仕様)

晴れた日の午後、セブンをドライブすれば満面の笑顔になれるものの、すっかり疲れてしまう。一方でエリーゼなら、同じくらい楽しんだ後でもまだ体力は残り、夕飯の支度もできるだろう。

ローバーKシリーズのエンジンとトランスミッションは、MGFからそのまま譲り受けたもの。エリーゼのシャシーが、一番幸せを感じられる居場所になった。

DOHCの16バルブヘッドを持ち、アルミ製で軽量。ロードカー用というより、レースシーンの方がピッタリのエンジンでもある。それだけに、定期的なメンテナンスも不可欠だ。

エリーゼのオーナーは、一般的に必要な手入れを怠らない。エンジンは、メンテナンスをしていれば不具合の発生は少なく、パワーアップにも耐える堅牢さも兼ね備えている。

シャシーは路面にピタリと張り付き、滑らかに、あらゆるコーナーの路面の乱れを吸収してくれる。ラインを外れてしまうのは、サーキットで許される速度領域に踏み込んだ時くらい。

エリーゼは、スポーツカーとしての乗り心地とハンドリングの、新しいベンチマークを設定した。ドライバーを間違いなく笑顔にしてくれる、稀有な1台だ。

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