【ポルシェ感、ある?】ポルシェ初のEV「タイカン」に試乗 クルマの家電化を覆すキャラクター健在

公開 : 2020.12.30 17:45  更新 : 2021.10.11 13:37

スロットルオフでビューンと伸びる?

日産のワンペダルドライブではないけれど、EVはスロットルオフすると回生機能が働いて、ギューっと減速するのが常識である。

ところがタイカンはガソリンのAT車のそれに似て減速感が希薄だった。

ポルシェ・タイカン・ターボ
ポルシェタイカン・ターボ

回生はしているし、その強さも3つのモードから選べるのだが、回生より気持ちよさを重視しているようだ。

ブレーキによる制動も実際にはその9割ほどを回生で賄っていて、残りを既存のブレーキでやっているというから驚きである。

アクアラインに入ったところでスロットルを床まで踏み倒してみる。

フルEVの680psは、ジェットコースターや戦闘機のような自動車らしからぬ加速感がある。

タイカンもその例に漏れなかったが、その興奮は長くは続かない。

レシプロエンジンのような力強い音色があるわけではないし、ターボのように一拍置いてから加速する「圧縮と解放」のドラマもない。

シフトチェンジもないから、乗り手がパワーバンドに配慮する必要もないのだ。

実はタイカンはリアに70km/h付近で切り替わる2段変速のギアボックスが備わっているのだが、その存在にも気づかなかった。

それでもなお、タイカンはポルシェが標榜する通りのフルEVスポーツカーと呼べるのだろうか?

ブランドの味、セオリーを越えた先に

EVの加速のマナーが盛り上がりに欠けるものだったとしても、タイカンは筆者がドライブした中で最高のフルEV車だと言い切れる。

ハンドリングや加速の一体感は十分にスポーツカーと呼べるものだし、作りと走りのクオリティの高さは他のポルシェと同等だと感じた。

ポルシェ・タイカン・ターボ
ポルシェ・タイカン・ターボ

つい最近、ヨーロッパ製の3台のフルEV(アレとアレとアレです)にまとめて試乗する機会があった。

どれもブランドの個性が感じられたが、多分に義務的な臭いもした。「とりあえずの叩き台です、様子を見ながら発展させていきます」と言った雰囲気である。

フルEVは各社ともまだ手探りの状態なので、そこを突くのはフェアではないかもしれないが。

ところがタイカンは、処女作にして迷うことなく核心を突いてきたからビックリなのだ。その根底にあるのは、ポルシェのクルマ作りの信念と、その歴史なのだと思う。

「ポルシェ何たるか」はカスタマーの脳内にもちゃんと浸透しているので、タイカンのステアリングを握れば誰でも「ピンとくる」のである。

前後モーターの4駆、床下バッテリーといったセオリーに従うと、フルEVのテイストが似てしまうのは当然だろう。

それらの事実を乗り越えるアーカイブを持ったブランドこそがEV時代の覇権を握るのかもしれない。

記事に関わった人々

  • 佐藤正勝

    Masakatsu Sato

    1964年生まれ。1984年東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業後、八重洲PRセンターに入社。86年にF1/ルマン24時間を撮影後何かのスイッチが入ったらしく退社。フリーとなり国内外のレースを撮影。91年に撮影したDTMで、また何かのスイッチが入ったらしくどっぷりドイツ漬けに。現在は撮影のみならず、CS放送でのレース解説や雑誌への執筆も。
  • 吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。BMW 318iコンパクト(E46)/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。

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