【三菱だけじゃない】逆風に直面する日本メーカー 欧州で生き残る方法はあるか?

公開 : 2021.01.08 06:25

厳しい環境規制や需要の変化、激しさを増す価格競争など、日本メーカーは欧州市場で逆風にさらされています。三菱は現行モデルをもって欧州から撤退し、ホンダも2か所の工場を閉鎖予定。生き残る道はあるのか、探ります。

トヨタ以外は苦戦する欧州市場

text:AUTOCAR UK編集部
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

7月に三菱自動車が欧州から撤退すると発表したことで、トヨタ以外の国内メーカーが現地で直面しているさまざまな問題が浮き彫りになった。

排出ガスをはじめとする環境規制がますます厳しくなっていることに加えて、欧州では高性能のコンパクトカーを求める声が高まっており、他の地域と比べてもはるかに厳しい市場となっている。

三菱アウトランダーPHEV
三菱アウトランダーPHEV

三菱は、ラインナップ上の現行モデルの生産が終了した後、収益性の高い東南アジア市場に集中するため、1975年に始まった欧州での事業に終止符を打つとしている。ダイハツも2013年に欧州から撤退した。

調査会社のジェイトー・ダイナミクスによると、スバルは今年、欧州における9月末までの9か月間の販売台数はわずか1万3359台にとどまる。一方、スズキは法規制に対応するためにラインナップの大幅な変更を余儀なくされ、その結果、販売台数は40%も減少した。

日産も、アジアのナンバーワンメーカーの座をトヨタと争ってきたが、今年10か月間の販売はライバルの半分以下に落ち込んだ。ACEA(欧州自動車工業会)のデータによると、西欧での同社のシェアは2.5%に低下したが、トヨタはハイブリッド車が好調で5.4%に上昇した。

一方、ホンダの同時期の販売台数は4万640台にとどまったが、市場全体で33%減少したことを受け、この動きに合わせた落ち込みを見せている。

最も大きな壁は排出ガス規制

日本の自動車メーカーは厳しい逆風にさらされている。LMCオートモーティブのアナリスト、サミー・チャンは次のように述べている。

「排出ガス規制から厳しい市場環境、プレミアムセグメントへの圧力、競争による価格設定に至るまで、日本の自動車メーカーは欧州での採算性を考えると悪夢のようなシナリオに直面しています」

日産マイクラ
日産マイクラ

中でも最も厳しい課題は排出ガスであり、欧州連合(EU)による罰金のリスクにさらされている。

「欧州ではCO2の排出量目標が非常に厳しく、今後10年間に成長するためには明確なBEV(バッテリー電気自動車)戦略が必要です。マツダ、スズキ、スバルが欧州でのBEV戦略を明確にしているとは現時点では言えません」

これら諸問題は日本メーカー特有のものではないが、各社にとって欧州はせいぜい二次的な市場であることに変わりはない。例えば、スズキの欧州での売上高は14%に過ぎず、スバルは主に北米を対象とした企業だ。

さらに、円高で輸出価格が長年高止まりしている日本で多くのモデルが生産されていることを考えると、先行きは暗い。

中国や米国のような大市場に比べて、売上に大きな影響をもたらす可能性は低いにも関わらず、高価なソフトタッチプラスチックやアンビエントライトなどを求める欧州の要求に対応する必要はあるのだろうか。

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