(一応)フェラーリ初EV 3/4サイズの250テスタロッサ試乗 ホビー用とは思えぬ価格と品質

公開 : 2021.12.25 11:50

オックスフォードシャーで製造される250テスタロッサの縮小版レプリカは、英国産とはいえフェラーリ公認で、しかも跳ね馬初のバッテリーEVです。ナンバーは取れず、それでいて高価格ですが、大きな意義のある一台でした。

フェラーリ初EVは英国製

4分の3スケールのフェラーリを語るのに、ポルシェボクスターを引き合いに出すのがふさわしいかはわからない。しかし、ボクスターの出自が理解できれば、フェラーリ・テスタロッサJについても理解しやすいはずだ。

ある時期のポルシェ・ボクスターは、シュトゥットガルトではなく、フィンランドで造られていた。手がけていたのはヴァルメト・オートモーティブだ。フェラーリ・テスタロッサJの場合は、イタリアではなく英国製で、ビスターに居を構えるリトルカー・カンパニーが製造している。それでも、フィンランド産ボクスターが間違いなくポルシェであるように、この英国産のミニチュア・フェラーリもまた正真正銘のフェラーリだ。そこが、重要なところである。

250テスタロッサを模した4分の3サイズのホビーカーは、英国製ながらマラネロ公認。つまりこれは、フェラーリ初の完全電動車なのだ。
250テスタロッサを模した4分の3サイズのホビーカーは、英国製ながらマラネロ公認。つまりこれは、フェラーリ初の完全電動車なのだ。

ほかのいかなるフェラーリもそうであるように、このテスタロッサJのデザインや開発はフェラーリが主導している。そして、フェラーリの正規ディーラーで購入でき、スペック決定のプロセスもまったく同じ。ほかの新車のフェラーリと変わらず、自分好みの仕様をオーダーできるのだ。それでも、これが本物のフェラーリといえるのか疑問を感じる向きには、フェラーリ公式のシャシープレートが付与されることをお伝えしたい。

フェラーリ・テスタロッサJのセールスポイントは、それだけではない。いうなれば、これはフェラーリ初のフルEVだ。今後、本当のスーパーEVは登場するだろうが、それに先駆けて発売されたバッテリーとモーターで走る跳ね馬だといえる。ただし、最高速度は100km/hに届かないので、史上もっとも遅いフェラーリでもある。

ジャガーやアストンマーティン、ベントレーといった英国の名門ブランドが進んで過去の名車を復刻する中、フェラーリはクラシックモデルの現代版製作を、これまで拒み続けてきた。そんな中で、7万8000ポンド(約1092万円)という、史上最安の価格で小さなテスタロッサが発売されたわけだが、金額に見合う価値が見出せるかという見方をするなら、かなり高くつくといえる。

オリジナルの設計を75%サイズで再現

このクルマがどのようなものか説明したところで、次は誕生の経緯に触れることとしよう。このおもちゃとは思えない価格を正当化できるとするならば、これがテスタロッサを再現したボディを乗せただけの子供向けゴーカートではないことが理由のひとつになるだろう。その手のおもちゃだと思ったら、それはまったくの間違いだ。

手作業の叩き出しで製作されるボディは、1957年当時の設計図をもとに、75%サイズでテスタロッサを再現し、量産フェラーリと同じ塗料でペイントされる。さらに詳しくみていくと、ボディの下にはオリジナルのテスタロッサと同様に設計されたスペースフレームが隠れている。フロントのダブルウィッシュボーンサスペンションは、ジオメトリーまで同じだというのだから驚きだ。

オリジナルの基本構造を75%サイズで再現し、一流メーカーのパーツを多数装着した本気仕様。フロントに積む駆動用バッテリーは、簡単に交換できる設計だ。
オリジナルの基本構造を75%サイズで再現し、一流メーカーのパーツを多数装着した本気仕様。フロントに積む駆動用バッテリーは、簡単に交換できる設計だ。

違いがあるのはブレーキで、初期のテスタロッサは四輪ドラムだったが、テスタロッサJはディスクを装備する。それも、ブレンボが開発したこのクルマの専用品だ。これをはじめとして、OEMパーツの製造元リストはさながら一級の紳士録だ。ダンパーはビルシュタイン、スプリングはアイバッハ、1957年のオリジナル品をベースとしたオプションのホイールはボラーニ。美しいウッドリムを備えるナルディのステアリングホイールは、ダウンサイズしているものの、65年前に供給されたもののスペックを正確に再現している。おもちゃかもしれないが、いたって真剣に造られているのだ。

駆動用の電気モーターは、リアに1基搭載される。バッテリーはノーズに3つ収められるが、ひとつあたりのサイズはブリーフケース程度で、単体での持ち運びが可能だ。もしもガレージにバッテリーをもう1セット用意できるのなら、交互に充電し、差し替えて使うことができる。テレビリモコンの電池を交換するほど簡単ではないが、やることはたいして変わらない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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